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「ゲノム編集食品」10月から解禁!肉厚マダイ、アレルギーない卵・・・安全性は大丈夫なの?

   この10月1日(2019年)から「ゲノム編集食品」の販売が解禁される。ゲノム編集食品とは、遺伝情報を編集することによって、食材の生物に新しい性質を与えた食品で、たとえば近畿大学が生産する「マッスルダイ」は、普通のマダイよりも筋肉量が1.2倍多く肉厚だ。ほかにも、血圧を下げる成分を多く含むトマト、アレルギー物質が少ないタマゴなど、さまざまな種類の食品で研究が相次いでいる。

   九州大学大学院・唐津水産研究センターでは、ゲノム編集の技術を使ったサバを開発している。サバは攻撃性が強く、水槽の中で稚魚同士が共食いして養殖は難しい。だが、ゲノム編集で攻撃性を抑えることができる。大賀浩史助教は「水産の未来を広げるかもしれない。革命です」と期待する。アメリカでは日本以上に開発が進み、ビタミンの多いベリーなど、50種類ものゲノム編集食品を開発中の企業もある。

国の安全性審査の対象外

   ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品はどこが違うのか。遺伝子組み換えで害虫に強いトウモロコシを作るには、バクテリアの遺伝子を『入れる』。ゲノム編集食品は、攻撃性を抑えたサバならば、サバが本来持っている遺伝子の一部を『切る』。

   販売ルールも大きく違う。遺伝子組み換え食品は国の安全性審査を受けることが義務付けられているが、ゲノム編集食品は必要ない。遺伝子を『切る』というのは、従来の品種改良と変わらないからだ。梨の「ゴールド二十世紀」は遺伝子を切ることで突然変異を促し、誕生したものだ。

   とはいえ、リスクもある。「オフターゲット」といわれるもので、遺伝子を切るための『ハサミ』が、別の遺伝子を切ってしまう。ジャガイモは日光が当たると毒を生成し緑色に変色するが、ゲノム編集で変色しなくすると、毒に気がつかず食べてしまうことになるかもしれない。

   アメリカもゲノム編集食品の審査は必要ないとしているが、EUは遺伝子組み換え食品と同じ規則を適用し、裁判所の判断が必要としている。日本消費者連盟の纐纈美千世事務局長も不安が残ると言う。

   「ゲノム編集食品の販売には反対です。欧州のように規制すべきでしょう。ゲノム編集は新しい技術で、わからないことがまだたくさんあります。食経験のないものを食べることになるのだから、子や孫の世代にも影響する問題です」

「認証マーク」で消費者に分かる表示できないか

   アメリカでは「Non-GMOプロジェクト」などがゲノム編集食品に認証マークを付けようとしているが、サプライチェーンをさかのぼって調べなければならないので、時間もコストもかかる。明治大学の中島春紫教授は「ゲノム編集がなされているかいないかを科学的に区別するのは難しいため、表示を義務化しても実効性を担保できません。分析してもわからないので、違反の証拠がなく、摘発できない。企業は、この新しい技術を理解してもらうためにも、表示してメリットを説明することが望ましい」と話す。

   纐纈事務局長は「消費者には選ぶ権利があります。食べたくなければ食べない。そのためにも表示は必要です。ゲノムをいじる危険性についてももっと議論は必要だと思う」と訴えた。

NHKクローズアップ現代+(2019年9月24日放送「解禁!"ゲノム編集食品"~食卓への影響は?~」)