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2階しか明かりが灯らない台風19号被災地の家々――復旧・後片付け進まず1階は浸水時のまま

   台風19号で甚大な被害が出た宮城・丸森町は、1カ月たった今も流木や土砂が積もり、水が引いていない場所もあり、復旧は見通せない。多くの家が2階だけに明かりが灯っている。浸水した1階を避けて、2階で生活する「在宅被災者」だ。避難所は落ち着かないと、自宅の2階で母と娘と3人で暮らす男性は、ガスコンロが使えないので、食事はスーパーの惣菜ばかり。「毎日同じようなものを食べている」と嘆く。

   千曲川の堤防が決壊した長野市の男性は、寒さに困っている。最低気温3度のなかで、修繕のため家の床や壁をはがしてしまっているからだ。エアコンの室外機は流されてしまったので、暖房器具は石油ヒーターだけ。靴下を二重に履き、カイロで寒さをしのいでいる。

   12月以降はマイナス7~8度にもなるが、「補修しながらなんとか寒さに耐える」と話す。

   夏井川が氾濫した福島・いわき市の臨時診療所には、「眠れない」と訴える在宅被災者が増えた。夫と2人で暮らす自宅が1.2メートルまで床上浸水したという女性は、「濁流に飲み込まれた時の風景がよみがえり、寝ても覚めても不安。睡眠導入剤を飲んでも1時間くらいで目が覚めてしまう」と訴える。被災以来、寝込んでひきこもるようになった夫のこともも心配だ。ストレスで耳も聞こえなくなり、筆談で生活しているという。

   長野市の避難所では体調不良を訴える人が増加しており、長野市は14ある避難所を11月末(2019年)をめどに閉鎖したいとしている。「寒さや感染症のリスクを避けることを優先した」と市の担当者は説明する。

東日本大震災・福島原発事故とダブル被災

   台風19号と東日本大震災の「二重被災」にあった農家も多い。堤防が決壊した宮城・大郷町でトマト農家を営む男性は、東日本大震災の津波でも大きな被害を受け、2年前に内陸部に移転したばかりだった。15億円投資して建てたトマトハウスや買ったばかりのフォークリフトなどが被災してしまった。

   別のトマト農家の男性は、津波被害で1億2000万円の負債を背負い、毎月1200万円ずつ返済してきたが、台風19号被害で負債額は2億4000万円に増えてしまった。

   ゲストの東日本大震災の被災者支援に当たっている弁護士の在間文康氏はこう話す。「生活再建支援金や応急修理などの制度がありますが、非常に複雑なんです。どの制度を使うのがよいか慎重に検討していく必要があります」

   たとえば、「被災ローン減免制度」は被災で返済が困難になってしまった借り入れを、一定の条件のもとで減額、免除する制度だ。「これは、手元に生活再建に充てるお金を残しながら、借金の減免を受けられるメリットがあります。いわゆるブラックリストに載らないために、再度のローンを組むことができ、原則として保証人に請求がされないので、気軽に利用できるというメリットがあります」

   武田真一キャスター「被害から1カ月経ちましたが、危機はまだ続いています」

NHKクローズアップ現代+(2019年11月12日放送「台風19号1か月 被災地からの訴え~いま何が必要か~」)