J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

『電話』やっぱり便利だ!いや、もう邪魔だ!再活用する佐川急便、全廃するITベンチャー

   ネットのメールやSNS全盛の時代に、電話が再び脚光を浴びている。今年10月(2019年)に埼玉県で開かれた電話応対コンクールの参加者は1万人を超え、電話検定には去年は1万2000人の受験者があった。

   宅配大手の佐川急便は、再配送や配達確認はすべてネットでできるが、営業所には電話がひっきりなしにかかってくる。電話は複雑な相談が多いという。きめ細かく対応しようと、今春から電話研修を始めた。研修を受けて合格すると、手当が支給される。「会社の代表としてお客と話す1回の電話、品質を決める」というのが理由だ。

   電話やメールを使いこなす宮田裕章・慶応大学教授は「単純なやり取りならAIでこなせます。感情をともなうやりは電話で。SNSやメールもふくめて、さまざまなツールを使い分けないと仕事が回りません」という。

人気の「もしもし検定」受けてみたら・・・

   NHKの高山哲哉アナウンサーが電話の「もしもし検定」初心者向けの3級を受けた。周りに誰もいないときに出たという設定で受話器をとったが、「受話器を上げるのといっしょにメモをとらないといけません」と、検定創設者の吉川理恵子さんにさっそく注意された。「○○さんはいますか」の電話に、「いま他の電話中です、どうしますか」とこたえると、お客を追い込むと減点。同名の人がいた場合は、「課長の○○ですか」の応答では個人情報がもれるため、「○○は2人おります」と答えるように指導された。

   吉川さんは「電話のぬくもりがビジネスになっていく」と、じかに会話を交わす電話の効用を挙げる。高山アナは「機械では人のパッションや共感はなかなか伝わらないですね。電話はよい手段かと思います」

   岐阜県の商業高校は、3年生に検定受験を勧めている。卒業生から「電話応対を学んでおけばよかった」との声が寄せられたためだ。オールドメディアとされる電話が、ビジネスや就職の世界で復活しつつあるのだ。

SNS世代の「電話イップス」呼び出しベルが鳴るだけで緊張

   対極には、電話をとるのがつらい、緊張してしまうというSNS世代の「電話イップス」の問題がある。三須雄介さん(27)は大企業の広報部署にいたが、電話が嫌で1年で転職した。「人づきあいが苦手なほうではないが、固定電話で知らない相手と話した経験がなかった」という。鳴るだけで緊張してしまい、メモを忘れる、受話器をとりそこなうなどのミスをやったそうだ。

   妻の早紀さん(26)も「電話が突然かかってくると、暴力的に感じます。その場でこたえなければいけないのが怖い。考えをまとめる時間がほしい」と話す。夫婦のやり取りもLINEで、「電話がなくても生きていけます」「SNSでも相手の反応はわかります」という。SNSなら履歴が残るメリットもある。

   広島県の精米機メーカーは、午後1時すぎから2時間ほど内線電話を一切禁止した。「仕事に集中できないという意見が出たためで、これで仕事が中断されることを防げた」と役員はいう。社外からの電話には管理職が出るようにしている。効率が大幅アップし、残業時間は半分に減った。

   すべての電話機を廃止したというITベンチャー企業もある。一部の取引先から契約を解除され、売り上げは10%減ったが、高圧的な電話や受けた社員へのケアに要する時間が31%減ったという。

   宮田教授は「人と人とのつながりをどうデザインするかが問われます」と解説する。武田真一キャスターは「コミュニケーションの質そのものを上げていかないといけませんね。電話も他の手段も大事です」と手堅くまとめた。

NHKクローズアップ現代+(2019年11月20日放送「"もしもし革命"進行中!~いま電話になにが?~」)