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20人に1人が性暴力被害!「でも、だれにも相談できなかった」国際政治学者・三浦瑠麗さんも・・・

   男女を問わず20人に一人が性暴力の被害を受け、被害者の6割が誰にも言えず悩んでいる。そんな実態が浮き彫りになった。関東地方に住む母親のエツコさん(仮名)は、中学生の娘さんから「SNSで知り合った男に騙され、性器を触られる被害に遭った」と告げられた。1年近く誰にも言えず悩んできたという。しかし、エツコさんは相談に乗る前に「責めてしまった。子どもがようやく告白してくれたのに、どうしていいか分からなかったんです。うちの子はすごく良い子だったので、裏切られたみたいな気持ちが大きく、すごく叱ってしまった」と話す。

   母親から責められて、娘さんは部屋に閉じこもるようになり、母娘の会話も荒んでいった。「自分で変わると決めれば、治るよ」「バカだね、死ね カス!」そんな口論が続いた。エツコさんは「私自身、すごく辛くなって、うつ病状態に。娘の不安も強くなって、『一緒に死んで』みたいな。二人ですごく苦しみ続けた感じですね」と話す。

   家族ぐるみの付き合いのあった男から性被害を受けた19歳のマホさん(仮名)は、高校3年生の春、男から体を触られ、男の性器を触るよう強要された。母親に相談したが、「『えっ、マジ、警察に行ったところで、証拠も何もないからあなたが悪いんですよ。終わりだよ』と言われ、何か親に追い詰められるような感覚になってしまった」という。

   孤立したマホさんはフラッシュバックや不眠に悩まされ、成績は急降下。大学進学を断念した。「本当は、お母さんとして心に寄り添って欲しかったんですが、そんなことは全然なかったです。これから辛いことがあっても、絶対に相談しないし、まったく信頼していない」と話す。

「不安にさせそうで、母親にも言えない」

   母親に相談したばっかりに、叱責されたり、世間体を気にされたりと、被害を受けた娘たちはさらに気付いている。「一度たりとも両親に直接話したことはない。親だから言えないのです」という。

   中学時代、下校途中に性暴力の被害を受けた国際政治学者の三浦瑠麗さんも、親に話せなかった。「わりと幸せな家庭で、兄弟も多く、家に帰るといつも通りの光景がありました。そのいつも通りの光景に、いきなり爆弾を投下することはできないと思ったんです。このまま自分が抱え込んでいれば、幸せな家庭を苦しめることもないだろうとか。娘が汚されたとか、結婚できなくなるんじゃないかとか、取り越し苦労ではあるんだけど、そういう不安を母が覚えるだろうなと幼心に思ったんです。

   しかし、私が本当に何がしてほしかったかのかというと、大好きな娘として受容して欲しいだけだったんです。でも、多分それも得られないんじゃないかなと思ったんです」

   三浦さんがようやく打ち明けたのは、大学時代から交際し、結婚した清志さんだった。話を聞かされた清志さんは「こうすればいい、ああすればいいよりも、聞いたあげることが(夫の)一番の役割。黙って聞くことを意識しました。本人が一番大変なので、周りが勝手にじたばたするのはあまりいいことではない」

加害男は反省もせず同じ行為を繰り返す

   親に告白するか黙っているか、選択は難しい。ゲストの日本臨床心理士会の信田さよ子理事(原宿カウセリングセンター所長)はこんなアドバイスをする。「気持ちが混乱しているときに、親がまず第一に言うことは、『相談してくれてありがとう』ということだと思います。母親である私を信頼してくれたことに対し『ありがとう』と伝えることです。

   娘が性被害を受けると、母親は半分、自分も被害を受けたような感じになるんです。ついショックで叱ったり、責めてしまう。それは頑張って言わないでほしい」

   信田理事はこうも指摘する。「性暴力被害の深刻さは想像以上で、みなさんにわかっていただきたい。性被害を特別扱いしないで欲しい。ごく当たり前に日々生きている人なんだと心掛けてほしいんです」

   社会が特別扱いするために、被害者が黙ったままでいる。一方、加害者の男は反省もせずにのうのうと同じ行為を繰り返す。

NHKクローズアップ現代+(2019年11月27日放送「まさか家族が性暴力に・・・身近に潜む被害」)