2020年 1月 23日 (木)

〈ドクター・スリープ〉
キューブリック版『シャイニング』とキングの原作をこよなく愛するファンにとっては狂喜乱舞の映画だ

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「ドクター・スリープ」((C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved)
「ドクター・スリープ」((C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved)

   壮絶な事件を経験し父親を亡くしたダニー(ユアン・マクレガー)は、不思議な能力=シャイニングにより、死者が見え、父親と同じようにアルコール中毒になり、どん底の人生を送っている。彼の周りで子どもばかりを狙った不可解な連続殺人事件が起き、ある日、彼の前に謎の少女が現れる。少女はダニーより強い能力を持っていた。ダニーと少女は事件の謎を追う中で、40年前の惨劇が起きたホテルに辿り着いて...。

   スティーヴン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督による『シャイニング』(1980)を観ていなくても、隙間から狂気の形相で睨むジャック・ニコルソンのポスターを知っている人は多い。本作は、今もなおホラー映画の傑作として名高い『シャイニング』の続編として、2013年にキングが発表した小説を、ホラー作品を数多く手掛けるマイク・フラナガンが脚本・監督を担当し映画化。キューブリック版『シャイニング』は、原作とストーリー展開が全く違い、キングが激怒したのは有名な話だが、本作に関してはキングが手放しで褒めているという。その要因は一体何だろうか。

「オーバールック・ホテル」のカメラワークと音楽に感激

   主演のユアン・マクレガーの魅力を形容するのは難儀だ。とにかく「良い」ものは「良い」としか言えない。高校を中退して、エキストラなどをして演劇学校に入り、最終学年のときにやっていた一人芝居が認められてスカウトをされた経歴を持つこの俳優は、決して「巧い」タイプではないだろう。むしろ「愚直」である。だから良い。反骨心と真っすぐな優しさが芝居に表れていて、滑稽なまでに「人間」を演じ切る。本人はホラー映画が苦手であり、『シャイニング』を観ていないとはっきり言うのも好感が持てる。

   監督のマイク・フラナガンは『オキュラス 怨霊鏡』『サイレンス』『ソムニア 悪夢の少年』『ウィジャ ビギニング~呪い襲い殺す~』と立て続けにホラー映画を手がけ、確かな手腕を発揮してきた典型的な「職業監督」といえる。前回版ファンにとっては本作の「能力 vs 能力」の対立構造は、意にそぐわないだろうが、キングの原作には忠実だ。それに近年は登場人物の葛藤が分かりやすいほうがウケているのは興行的事実だ。

   マクレガーの「愚直」さとは裏腹に、フラナガンは心憎いほどに「狡猾」なのだ。後半に前回版のメインステージといえる山上にある「オーバールック・ホテル」でのカメラワークと音楽の煽りは、キューブリックという映画作家に対するリスペクトが全開であり、前回版ファンにとって狂喜乱舞の瞬間だ。「愚直」と「狡猾」の融合が入り混じった演出は――キューブリック版への敬意と原作者キングの真意を融合させ、対立する両者を40年振りに和解させたのだ。これぞ、職業監督の神髄だ。

   丸輪 太郎

☆☆☆

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