2024年 4月 16日 (火)

現金が使えないデジタルマネー時代がやって来た!買い物も給料もお小遣いもスマホ決済

   デジタルマネーが社会を大きく変えようとしている。ある家族は、もう1年ほど現金を使っていないという。光熱費の支払いはスマホ、夫の小遣いはLINEペイ。「もう現金の生活に戻れない」と妻は話す。

   ガス会社「日本瓦斯」で営業を担当する社員は、1日に10軒ほどの顧客を訪問するが、そのつど駐車場代や収入印紙代などの経費を立て替えていた。営業所に戻ると、立て替えのレシートを提出して、経理担当者はそれを取りまとめて本社に送る。社員に経費が振り込まれるのは月に1回だった。

   こうしたわずらわしさをなくすため、デジタルマネーを導入した。スマホでレシートの写真を撮影するとAIが金額と項目を読み取り、データが本社に送信される。経費は1週間ごとに社員のスマホに入金される。精算のために営業所に戻る必要もなくなり、事務作業の時間が短縮し残業時間が減った。

   経理担当者の業務も変わった。これまでは営業担当者の提出するレシートを台帳に貼り付け、通し番号を振って一覧表に入力していた。デジタルマネーを導入したことで、作業時間が月に20時間以上も減り、その時間で新たな業務ができるようになり、「全体の効率が上がった。革命です」と担当課長は話した。

福岡市は税金、住民票、ゴミ出しをLINEでOK

   住民サービスにデジタルマネーを導入した自治体もある。福岡市は2年前にLINEと提携し、デジタルマネーで住民票の発行や税金の支払いなどが行えるようにした。去年7月(2019年)からは粗大ごみの処理手続きにも取り入れた。それまでは、粗大ごみの種類や個数を伝えて収集日や金額を確認し、コンビニなどで処理券を購入して出していたが、申し込みから完了まで1つのアプリで完結するようになった。決済時に発行された受付番号を書き、ゴミに貼って出すだけだ。電話での問い合わせは2割減り、処理券を配備するコストや窓口の人員削減にもつながっている。全国の140自治体がすでにLINEと契約しているという。

   賃金の支払いにもデジタルマネーが導入されるかもしれない。法律で現金や銀行振り込みに限定されている賃金を、デジタルマネーで受け取れるようにするのだ。その規模はおよそ240兆円とも言われ、IT企業のサービスがさらに拡大する可能性がある。

   デジタルマネーにはリスクもある。銀行預金なら1000万円まで全額保護されるが、デジタルマネーにはそんな仕組みはない。企業次第で還元率や手数料などのルールを変えられる可能性もある。こうしたリスクについて、野村総合研究所エグゼクティエコノミスト・木内登英氏木内氏は「法律で銀行並みの規制を入れていくことで解決できる」と指摘した。

デジタル通貨を進めるEU、中国・・・日本は出遅れ

   スウェーデンでは教会の寄付も有料公衆トイレもデジタルマネーだ。現金を使う人が減り続け、流通量は経済規模の1%余りまで下がっている。便利になった一方で弊害も出ている。その1つが、アプリを使いこなせない高齢者や高価なスマホを持てない人たちが少なくないことである。デジタルマネーの決済に欠かせないインフラの問題もある。北極圏に近い地域では、雪による停電や通信障害が頻発する。

   スウェーデン中央銀行は法定通貨クローナを電子化したデジタル通貨「e-クローナ」の発行を考えている。国がその価値を保障して、誰もが利用できるようにするのが狙いだ。スマホがなくてもキャッシュレスで決済ができる小型チップの技術も研究している。

   e-クローネ構想を急ぐのには、フェイスブックのザッカーバーグCEOが打ち出したデジタルマネー「リブラ」計画が背景にある。27億人のユーザーが中央銀行を介さないリブラを使うようになれば、中央銀行は国内のお金の流れがつかめなくなり、景気や物価をコントロールする金融政策が効果を失いかねない。

   リブラ構想に危機感を強めているのはスウェーデンだけではない。中国、カナダ、EUなどがデジタル通貨を構想している。木内氏は「通貨覇権問題も実は絡んできている」と指摘する。日銀審議官を務めていた木内氏によると、日本はデジタル通貨に慎重で、向こう5年間はデジタル通貨は必要ないとしているアメリカと足並みをそろえているという。「もし、アメリカがデジタルドルを発行すれば、日本もデジタル円に向かう。今からしっかり設計を考えておく必要がある」と話した。

NHKクローズアップ現代+(2020年1月21日放送「社会が激変! デジタルマネー革命」)

文   バルバス
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