2020年 12月 1日 (火)

〈パラサイト 半地下の家族〉
アカデミー賞4冠も納得、文句なしの大傑作!徹底した格差描写の先にあったのは「地下の匂い」だ

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   タイトルにもある「半地下」とは、韓国特有の半分地下に埋まっているような住宅で、もともとは北朝鮮の攻撃に備えた防空壕だった。父ギテク(ソン・ガンホ)を大黒柱とするキム一家はそんな半地下住宅で暮らす四人家族で、全員失業中だ。宅配ピザの箱を組み立てる内職で細々と生計を立て、隣家のWi-Fiに勝手に接続し携帯電話を使い、家の前の路上で害虫駆除のスモッグが散布されれば我が家に潜む害虫もついでに駆除してもらおうと窓を開け放つ。家族全員が早く半地下から抜け出し、普通の暮らしがしたいと願っている。

   長男のギウ(チェ・ウシク)は大学入試に三度落ちている浪人生だが、金がなく予備校に行けない。そんな彼を憂いた友人が家庭教師のバイトを紹介した。相手は高台の閑静な住宅街に大豪邸を構えるパク家のお嬢様ダヘ(チョン・ジソ)。さすがに浪人生では雇ってくれない、ということで美大志望の妹ギジョン(パク・ソダム)の手を借り、大学の入学証明書を偽造し、ギウは家庭教師の職を得ることに成功する。そこで高台での豪華な暮らしを垣間見たギウは、ある計画を立てる。それは妹ギジョンもパク家の末っ子ダソン(チョン・ヒョンジュン)の家庭教師として忍び込ませることだった。

  • 「パラサイト 半地下の家族」((C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED)
    「パラサイト 半地下の家族」((C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED)
  • 「パラサイト 半地下の家族」((C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED)

ちょっとした台詞、仕草からあぶりだされる二つの家族の格差

   地面の高さにある半地下の小さな窓。そこから見える薄汚れたソウルの路地裏の風景から映画は始まる。通行人の足元しか見えないこの視点は、キム一家の貧しさを象徴するカットだ。それから一家の生活が描写されるのだが、圧巻なのはトイレ。兄妹は携帯電話を掲げながらWi-Fiの電波を探し、無事にこの家の一番高い位置にある便座の上で近くのカフェのWi-Fiをャッチできたと、笑い合う。増設された半地下住宅では下水道管が床よりも高くなるため、便器が天井ギリギリの高い位置にある。要するに生活スペースは便器よりも下にあるのだ。そんな半地下住宅事情を巧みに切り取った生活描写は、悲惨な現状に反して底抜けに明るくたくましいキム一家のキャラクターが上手く提示され、全編に漂う笑いへの布石となった。

   一方、パク家の大豪邸のリビングには広い庭を一望できる大きな窓。申し訳程度しか日の光が入らない半地下の薄暗さに対し、パク家では光がさんさんと差し込み、夜には暖色の照明が一家をやさしく包む。しかし、神経質な夫ドンイクに、心に闇を抱える末っ子ダソンなど、パク家にはどこか影が漂う。その影こそが、半地下の家族の入り込む隙間となった。構図や光、ちょっとした台詞、仕草などを用いて、監督のポン・ジュノは二つの家族の格差を徹底的にあぶり出し、富める者の闇、貧しき者の光を逆説的に描写した。それは、交わることがなかった人々が交わり絡まり合っていく様に異様な説得力を与える。

   そして、徹底した格差描写の先にあったのは「匂い」。どれだけ身分を偽っても漂ってくる半地下特有の匂いが、一家の破滅への引き金を引く。高台、半地下に加え、地下の住民をも巻き込んだ中盤以降は、まさにジャンルを超越した怒涛の展開が待っている。全編が計算し尽くされた最高のエンターテイメント。文句なしの傑作だ。

シャーク野崎

おススメ度☆☆☆☆☆

 
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