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<9人の翻訳家 囚われたベストセラー>
500万ユーロ払わないと結末バラすぞ!人質に取られたミステリー小説完結編――犯人わかってからの展開が面白い

   人気ミステリー小説シリーズ「デダリュス」完結編を、英語、中国語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語、スペイン語、デンマーク語、ポルトガル語、ギリシャ語で出版するため、各言語の翻訳家9人が集められた。彼らは出版社が用意したフランスの人里離れた村の館で、外部との接触を一切禁止されて翻訳を進めていた。

   ある夜、出版社社長に「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する」という脅迫メールが届く。拒めば全ページを流出させるという。出版社社長は犯人は翻訳家たちの中にいると確信し、9人を執拗に追い込んでいく。

   世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ3作目「インフェルノ」の出版社による翻訳者たちの軟禁、ディズニー映画「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」がハッカーによって公開前に金銭的な脅迫をされたことなど、実際にあった事件がアイデアの下敷きになっている。

そうだったのか!!張り巡らされていたいくつもの伏線・・・最後の最後で納得

   序盤であっさりと犯人が明かされてしまうストーリー展開に拍子抜けしそうになるが、むしろこの映画の本編はそこからで、観客は犯人がいったいどんなトリックを使って、なぜ犯行に及んだのかを出版社社長とともに究明していく。

   無慈悲な社長が翻訳家たちを銃で脅すシーンでは、9人が協力して多言語が混じる会話でその場を切り抜けようとするなど、他のミステリーにはない、ならではの展開も面白い。また、いくら世界的なベストセラーでも、脚光を浴びるのは常に著者であり、翻訳家は日陰者という職業的な格差にも触れられ、人間ドラマとしても楽しめる。

   ラストでいくつもの伏線が張り巡らされていたことが明らかになり、唸らされる。ただし、犯人が完全犯罪を企てたわりには犠牲者が多いこと、社長が金の亡者のような一面的な描かれ方をされていた点は、ちょっと腑に落ちなかった。出版不況は日本だけでなく、どこの国も同じで、文学とビジネスの両立についても考えさせられる。ミステリー好きは一見の価値あり。

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おススメ度 ☆☆☆