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孤独死する外国人労働者たち!ほんの出稼ぎのつもりが日本に30年・・・身寄りなく、母国にも帰れず

   愛知県の団地で去年(2019年)、2人のブラジル人が遺体で発見された。日本で長く働き、母国に帰ることもなく孤独死していく外国人労働者が少なくない。

   アルベルトさん(64)は30代で家族と来日した。人口減による労働力不足から、1990年に出入国管理法が改正され、日系人とその家族に永住資格が与えられたころだ。経済不振のブラジルでは日本への出稼ぎブームが起きていた。以来30年、アルベルトさんはこの団地に住んで、自動車部品工場で派遣社員として働いた。元同僚(69)は「1個800グラムの部品を1日1000個作る。腕はパンパンだ」という。ブラジルで会計士だったアルベルトさんにはきつい肉体労働だった。

   やがて妻は娘と帰国し、アルベルトさんは娘の大学の学費を仕送りするため、毎朝6時に団地を出て夜6時に帰る。糖尿病をこじらせ、63歳で工場をやめてからは孤立を深めていった。一人暮らしの居間で倒れ、誰にも気づかれず、3週間後に、死臭から遺体が発見された。

   団地住民にアルベルトさんのことを聞いても、ほとんどが「わからない」「見たことはない」「初めて聞いた」と話す。わずかに、「エレベーターの中で会った。日本語はたぶん喋れなかったろう」と話す夫婦がいたぐらいだ。

   ブラジル人の知人がアルベルトさんの遺体をせめて迎えにと娘に連絡したが、カネがないと断られた。遺体は公営の無縁墓地に葬られた。知人は「高齢の外国人労働者は、母国にも日本にも安心できる居場所がない。日本とブラジルの間で自分が何者かわからない」と語る。

   この団地と周辺の外国人労働者100人に聞くと、20年以上の滞在者が60人。うち53人は当初は5年以内で帰国の予定だったが、20年、30年という人が多い。経済の低迷が続くブラジルには戻れないためだが、日本で28年間働くトラックドライバーは「2年間の出稼ぎのつもりだったため、日本で年金の保険料を払っておらず、老後の備えのない人が大半」という。「働いて、働いて、死を待つだけです」

健康保険も年金もなくホームレス化

   フラビオさん(60)は同じ団地内の公園で遺体で発見された。来日からの経過はわからないが、ここ5年間はホームレスで、公園のベンチによくいたという。在日ブラジル人向けのテレビ局には「何もしない毎日です」と語っていた。翻訳で得た収入で食いつないでいたらしい。

   外国人労働者を支援する川口佑有子さんは、「家族に迷惑がかかるから国に帰らないと話ていました。支援を申し出ても、死なないからと辞退されました」「その2日後に遺体で。名古屋がマイナスの気温の寒い日で、シャツぐらいしか着ていませんでした」という。 定住外国人の実態を調べる愛知県立大学の松宮朝准教授は「非正規労働の問題がまずあります。生活基盤が安定せず、地域のつながりが築けない」と指摘する。健康保険は22・6%、年金は46・1%が「未加入あるいは不明」という(2016年度愛知県外国人県民アンケート)。

   川口さんは「日本が受け入れた人たちの命がいま危機にあります。叫び声に気づかなければいけない。外国人労働者はモノではなく、(その人の)人生が日本にやってくると考えて受け入れを」と対応を求めている。

クローズアップ現代+(2020年2月27日放送「60代の孤独死 団地の片隅で~外国人労働者の末路~」)