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新型ウイルス不安に付け込む悪質トレンドブログ!デマ情報拡散して広告収入

   新型ウイルスの感染拡大で、不確かな情報を流して広告料を稼ぐ悪質なトレンドブログが横行している。1年前からトレンドブログを運営する30代の男性は、飲食店で働くかたわら、毎日2本か3本の「記事」を書く。題材はその時にネットで注目されている事件・事故やゴシップ、芸能情報だ。

   1月16日(2020年)、新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて出たというニュースが流れた。男性がネットのコメント欄をチェックすると、発生場所や感染経路を知りたいとの声があふれていた。「これならアクセスを集められる」とキーワードを検索し、目に留まった書き込みをコピーして、「新型肺炎の発生場所は神奈川県」と流した。情報のチェックはまったくなし。当人もそれが本当かウソかわからない。

   ブログには広告リンクが貼ってあり、クリックされると自動的に広告収入が入る。こうした配信サービスをグーグルなど複数の業者が提供する。「新しいビジネスだ」と男性は当たり前のように言う。去年10月(2019年)、神戸市の小学校の教師間のいじめでは、加害者の実名らしきものをブログに掲載すると、アクセス数は10万件を超え、月収は17万円に達した。

   ITリテラシーの専門家の小木曽健さんは、「コツさえつかめればトレンドブログは誰でも書けますよ。初期投資もかからない」という。弁護士の深沢諭史氏は、著作権侵害、名誉棄損、プライバシー侵害の危険を指摘する。本人が公開した情報でも、私生活上の事実をむやみに公開すればプライバシー侵害にあたることもある。「マスメディアでも個人でも責任を問われることは一緒だと認識する必要があります」(小木曽さん)

グーグルから停止されてもサイト売却して数百万円

   2年前にトレンドブログをやり始めた30代男性は、広告収入が月平均30万円、多い月は150万円あり、「おカネの山ですね」と、ライター2人を雇って月200本近い発信を続けた。壁にあたったのは去年7月、グーグルから「広告配信を停止する」という通知がとどいた。

   グーグルは「デリケートな事象、有害、危険な行為、悪質なコンテンツその他は、広告の表示を禁止しています」として、内容をチェックしている。2018年には世界中で1万5000件のサイトへの広告配信を停止した。

   それでも、停止された男性には「奥の手」があった。トレンドブログを他人に売却することだ。男性のブログはこれまでのサイトアップ実績から検索上位に表示される「ドメインパワー」がついている。売買を仲介する業者もいて、270万円で売れた。グーグルなどの契約は運営者ごとに行われるため、運営者が代われば同じドメインブログで収入が得られる仕掛けが、悪質なブロガーを助けている。

   NHKネットワーク報道部の菅野彰彦記者は「グーグルのチェックは現状では不十分。いたちごっこです」という。小木曽さんは「こうしたトレンドブログは『○○について調べてみました』と書くのが常套句ですので、これに注意して情報を見きわめ、ときには除外する。『SNSにありました』『フェイスブックがこう書いていました』も信じられないと思うべきです」と警戒を呼びかけている。

   NHKクローズアップ現代+(2020年3月12日放送「新型ウイルスでもネットに拡散 追跡! トレンドブログ」)