2024年 4月 24日 (水)

食い止められるか?「新型ウイルス不況」緊急事態宣言で日本経済いよいよ縮小

   安倍首相が新型コロナウイルス緊急事態宣言の発令に最後までためらったのは、日本経済が極端に縮小し、不況に突入する恐れが強いからだ。銀座・松屋は8日(2020年4月)から全館きゅうかんだが、すでに3月の売り上げが前年比で40%減少している。秋田正紀社長は「どうやって経費を絞って利益を確保していくか。さらに詰めていかなければ」と厳しい表情だ。

   中小零細企業の現預金は、全産業で2.4カ月分、製造業2.5カ月分、飲食サービス業2.1カ月、小売業1.5カ月分、宿泊業1.1カ月分しかない。マネックス証券チーフアナリスト・大槻奈那さんは「このデータから見ると、4月の中旬から5月にならないくらいに、中小企業は資金的に苦しい状況になる可能性があります」という。

広がる労働時間短縮や雇止め

   雇用危機も深刻だ。三重県のユニオンみえには労働時間を短縮されたり雇い止めに遭ったりしたという相談が相次いでいる。弱い立場の派遣労働者や外国籍の労働者が真っ先に影響を受け始めているという。

   雇用を守るために大きな決断を迫られた経営者もいる。イベントの企画や人材派遣を行ってきた会社の社長は、複数の金融機関からおよそ1億円の緊急融資を受け、さらに自分の生命保険も解約して運転資金を確保した。事態の長期化を見据え、会社の組織を再編し、イベント業務に当たっていた社員20人に警備などの派遣業務してもらうことにした。

   政府は雇用対策として、休業しても従業員を解雇しない企業には雇用調整助成金の拡充を図るとしている。これまで対象ではなかったパートや新入社員も助成する。大槻さんは「雇用主に払うと、働いている人に直接、短期的に資金が行き渡らないといった問題もあります。新型コロナの影響で減収といったことの証明の問題など、実態的に補助が受けられるのか心配」と指摘する。

しぼむ海外マーケット

   世界経済への影響も甚大だ。アメリカの4~6月のGDPは年率換算で28%以上のマイナスと予想されている。この2週間で新規の失業保険の申請は1000万件近くに上った。シアトルのレストラン経営者は、17の店のうち10店舗は休業に追い込まれ、350人に上る従業員の8割をいったん解雇した。現状では失業保険を受け取ったほうが従業員のためになると考えたからだ。

   ドイツ南部に拠点を置く工業用ファンのメーカーは、生産は通常の半分程度まで落ち込んでいる。政府の雇用対策を活用し、約700人の従業員を休ませることを決めた。

   欧米経済の影響は日本のメーカーにも及んでいる。米国の顧客から出荷を見合わせてほしいと連絡が入った工作機械メーカーは、感染拡大が収まりつつある中国市場に目を付けた。中国では企業の負担をおよそ8兆円軽減する経済対策を行っている。2週間の検疫などのマイナスがあるが、中国での生産能力を向上させるなどして新規の注文に対応できるようにするという。

   大槻さんは「中国は回復してきていますが、債務が非常に大きくなっていて、先の経済の安定性が担保されているわけでは必ずしもありません」と話し、「感染も金融も、国民の皆さんに安心してもらえる資金補助をどれだけ継続的に受けられるかだと思います」と話した。

   ※NHKクローズアップ現代+(2020年4月7日放送「緊急事態宣言 経済悪化をどう食い止める?」

文   バルバス
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