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死に体・安倍首相を見る石破茂の厳しい目――コロナ対策遅れ、アベノマスク、寛ぎ動画を痛烈批判

   4月22日(2020年)、自民党の石破茂元幹事長(63)に会いに永田町の衆議院第二議員会館へ行った。 会館の1階は、マスクをした警備員と受付嬢がいるだけ。普段通り手に持ち検査をされたが、コロナについての問診などはなかった。少し離れたところにカメラのようなものがあったから、空港のサーモグラフィのように、私の体温を測定していたのかもしれない。

   5階の石破の部屋では、何人かの秘書が忙しく働いていた。先約が帰って、4時きっかりにインタビューは始まった。こちらが「マスクをとりましょうか」というと、「大丈夫、私もしてませんから」と笑顔でいう。距離も椅子一つを間に挟んだだけ。 「コロナで地元へも帰れない。飲みにも行けない。何をしているのか」と聞くと、「このとおりですよ」と手を広げて見せた。何もしていないというのだ。どうせ多忙を理由に断られるだろうと、ダメもとでインタビューを申し込んだのは2週間前。すぐにこの日を指定してきた。コロナのおかげだろう。

   詳しくは、私が連載しているビジネス情報誌「エルネオス」をご覧いただきたいが、1時間の予定が2時間近く、耳に痛い質問にも笑顔で話をしてくれた。コロナ関連で、こういう質問をした。「世界中で『命の選別』が行われ、重篤な高齢者は切り捨てられています。日本でも、感染拡大は止まりませんが、死亡者の数はさほど多くない。致死率で2%程度で、ほとんどが50代以上です。医療崩壊させないためには、重症化しやすい60代以上、高齢者を先にPCR検査を受けさせ、陽性と判断された人を隔離・治療するようにすればいいのでは。そう、もうすぐ後期高齢者になる私は考えるのですが」

   石破は私のほうをじっと見て、「まだ判断するためのデータが揃っていないのだと思います。データが集まって、検査や治療の優先順位をどうするかを決める。そうなれば、今おっしゃるようなことも選択肢に入るのではないか」

   世界的な感染拡大で、すでにそういうデータは出ているのではないかと反論しようと思ったが、石破のいうように、彼は今、閣僚ではないから、慎重にいわざるを得ないのであろう。だが、安倍政権のコロナ対策の遅れや、アベノマスク、犬を抱いた動画について、また、妻の昭恵をコントロールできないことについては、厳しい批判を口にした。

   インタビューを終えて、石破に私はこういった。「最近は、次期総理は自分しかいない。そいう自信がテレビを見ていても感じられますよ」。石破は「そうおっしゃってくれるのはありがたいが、まだまだわかりません」。そういって一瞬、あの鋭い目線で見返してきた。

緊急事態宣言を尻目に昭恵夫人は宮崎・高千穂峡でパワースポット巡り...妻の不祥事で辞職か?

   週刊文春は、安倍首相は「妻も政府も制御不能になっている」という特集を組んでいる。衆院厚労委員会で、この非常時に自分の妻が大分県の宇佐神社を参拝した件を問いただされ、「私が不要不急の自粛を呼びかけたのは3月28日で、妻が神社に参拝したのは3月15日だから、問題はない」という苦しい弁明をしなくてはならなかったこと自体が、「異常事態」である。

   さらに、減収世帯へ30万円給付するという"目玉の経済対策"が、自民党から異論が出て、それに公明党が乗り、ひっくり返されるという前代未聞の事態も起こった。 週刊文春によれば、最初に行動を起こしたのは、安倍が可愛がってきた稲田朋美幹事長代行だったという。当然ながら、安倍は党も閣議決定もしているのだからと、ものの5分で追い返したそうだ。

   稲田は二階幹事長に泣きついた。二階はそれを受けて記者団に、「一律10万円の給付を政府に強く申し入れる」と発言。慌てたのが公明党の山口代表で、支持母体の創価学会から「次の選挙では自民党を応援しない」という声まで出て、翌日の15日朝、安倍に直談判に行き、「連立離脱も辞さない」と迫ったそうだ。安倍から「どうぞ」といわれ、山口は「もう公明党代表として立っていられません」と泣き落とし、安倍から「検討する」という言質を取ったという。二階発言からわずか15時間で、方針を変えてしまったのである。

   これも週刊文春情報だが、この裏には、最近、今井尚哉秘書官のいうことばかり聞いて、自分をないがしろにすると腹を立てている菅官房長官が、親しい公明党を裏で焚きつけたのではないかという見方もあるそうだ。

   さらに、党の若手議員連盟の安藤裕会長が、政府の経済対策を「百点満点で十点」とこき下ろしたそうだ。コロナ感染を契機に、安倍官邸の独りよがりのやり方に、党内外から、「安倍おかしいよ」という声が噴出してきて、倒閣運動にまで広がりそうな勢いである。

   週刊文春は、3月27日、昭恵夫人が宮崎空港にいたという目撃情報があると書いている。彼女は以前から高千穂がパワースポットだと気に入り、決まった旅館に泊まるという。 週刊文春が旅館関係者に問い合わせると、「女性2人で泊まった」と答えたが、旅館の社長に正式に取材を申し込むと、「最近は来ていない」と否定した。何やらきな臭い。もしこれが事実なら、安倍は、妻の不祥事で首相の座を追われた初めての宰相になるかもしれない。

小池都知事がばらまくコロナ対策9000億円!「大年増の厚化粧」と揶揄した石原慎太郎への仕返し?

   報道ステーションの富川悠太アナが退院したようだ。テレビ朝日側は日を置いて復帰させる意向らしいが、可哀そうないい方になるが、ジャーナリストとして恥ずべき失敗をやらかした富川は、半年から1年の「謹慎」くらいはさせないと、視聴者からそっぽを向かれるのではないだろうか。 大麻で逮捕された芸能人に対して、批判を口にすれば、「お前にそんなことがいえるのか」という声が飛んでくるに違いない。こうしたことをいうのも、彼のジャーナリストとしての資質を惜しむがゆえである。

   週刊新潮は巻頭で、突然、厚生労働省内で会見を開き、「まったく対策をしない場合、累計で約41万8000人がコロナで亡くなる」といい出した北海道大学の西浦博教授の発言を取り上げている。私もこの発言を聞いた時、なぜこの時期にこのようなことをいい出したのか、訝しく思った一人である。しかも、この数字はひと月前のもの。この発言があった翌日に、安倍首相が、緊急事態宣言の対象を全国に広げるといい出したから、厚労省が安倍ヨイショのために仕掛けたのではないかと疑ったぐらいだ。

   週刊文春は西浦教授に真意を問いただしている。彼は「これほどの危機が目の前に迫っていると、政権に腹を括ってもらうのが狙いでした。(中略)葛藤もありましたが、科学的な使命感で、私自身が専門家個人として発表しました」

   ご本人はまじめな感染症の研究者のようだが、コロナの恐怖を煽っているワイドショーに、さらにエサを与えるような発言は、専門家としていかがなものだったのか。私には疑問だ。

   安倍首相と比べて存在感を増しているように見える小池都知事だが、週刊新潮は、彼女が打ち出した9000億円という巨額なコロナ対策予算は、小池を「大年増の厚化粧」と喝破、ではない、揶揄した元都知事の石原慎太郎が現職の時、巨額の赤字をなくすためにさまざまな策を講じて作り上げた財政調整基金、自治体の内部留保9000億円を取り崩してばらまくというものだという。

   小池にすれば、私をバカにしたお返しに、あんたが貯めたカネを全部使ってあげるわよという「仕返し」なのかもしれない。

D・プリンセス、武漢チャーター便の感染者受け入れながら抑え切った自衛隊病院の見事

   週刊新潮でジャーナリストの石高健次が、クルーズ船などで感染した112人を受け入れ、治療したのに、院内感染ゼロを達成した東京都世田谷区にある「自衛隊中央病院」の"奇跡"をレポートしている。112人の内訳は、ダイヤモンド・プリンセス号の乗船者と、中国武漢からのチャーター機による帰国者。患者の平均年齢は68歳で、男女ほぼ半々。その半分近くの人に基礎疾患があったという。

   入院時、軽症が41.3%、重症が26.9%、全期間で全く所見を認めなかった人が31.7%だった。症状が緩やかに悪化するのを察知するために、高齢者では血中酸素飽和濃度の低下、若年層では頻呼吸に注意したという。

   PCR検査はやったが、陰性と出るケースが多く、精度に疑問があるためCT検査をしたそうだ。 PCR検査の精度は70%ぐらいではないか、CT検査を併用するべきだと、同病院の感染対処隊診療部新型コロナウイルス感染症対応チームの田村格・1等海佐がいっている。医師や看護師だけではなく、放射線技師も防護装備が必要。そのために、感染管理認定看護師3名の支援を受け、徹底的に防護マスクなどの着脱訓練をしたという。 患者の多言語には、各国大使館や自衛隊の中にいる通訳などの支援を仰いだそうだ。

   田村は、院内感染させないためには、「感染予防について経験のある人の助言を受け入れ、宿泊施設の構造を考慮したゾーニングを徹底すれば、やっていけるでしょう」 といっている。専門家の指導、スタッフの十分な訓練、防護資材の準備があればだが。

   ところで、北朝鮮の金正恩がこのところ姿を見せていないことで、米CNNが「手術後に重篤な状態になっている」と報じた。 これについて、石破元防衛相に聞いてみたが、日本が通信傍受している中にも、そうした動きは出ていないと聞いていると、疑惑を打ち消した。

   最後に、どうでもいい話を1本。週刊文春が、女優の剛力彩芽が別れたはずの前澤友作ZOZO前社長と復縁していたと報じている。4月19日に都内の会員制のレストランで2人仲良く食事をして、護衛付きのワンボックスカーで友作の自宅へと帰っていったというのである。

   剛力は友作と別れて、7年ぶりに映画やドラマ、舞台が決まったという。それなのになぜ? 女というものはそういうものなんだ。ダメな男ほど離れられないものなんだ。そういってはみるが、なぜなんだろう。女はいつまでたっても謎である。(文中敬称略)

   ※                ※               ※

   【告知】私の新刊が出ました。『野垂れ死に-ある講談社・雑誌編集者の回想ー』(現代書館・定価1700円)。――本書には、著者の華麗な人脈を反映して、戦後史を彩った数多のスター、政治家などが次から次へと登場する。そして、オウム真理教事件をはじめ戦後日本を震撼させた大事件を描く際の臨場感は圧巻である。ただ、著者の筆致は、有名スターや誰もが知っている大事件を扱う際にも、決して昂ぶることはない。むしろ、一般にはさほどその名を知られていない、編集長として戦友のように付き合った名物記者たちの描写が実に魅力的だ。おそらく著者にとって、人間の「有名無名」はさほど問題ではなく、とにかく「人間」一人ひとりに焦点を絞ることが大事なのだ。出版界の内外を問わず、同じ時代を生きてきた日本人なら、誰もが自らの来し方を想起できる点も本書の大きな魅力である(Amazonの紹介欄から)――

   今週、東京・神田神保町の東京堂書店で、2020年本屋大賞受賞作『流浪の月』(凪良ゆう)の次、第2位になりました。(元木昌彦)

   

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。