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新型コロナで介護クラスター崩壊!バタバタ倒れるスタッフ、家族も面会できず

   全国の介護施設で相次いで新型コロナウイルスのクラスターが発生した。緊急事態宣言が解除されても、多くの施設が危機に直面し続けている。富山市の富山リハビリテーションホーム老人施設で、行政や専門家らによる検証が行われた。この施設で4月から5月にかけて大規模なクラスターが発生。入居者と職員あわせて59人が感染し、9人が死亡した。

   検証チームが注目したのは食堂だった。毎日60人以上が集まり、4人1組になって食事などの介助を受けていた。もう1つは浴室。着替えや入浴のため、2人の介護士で1人の入所者を介助していた。これを週2回、1日数十回繰り返していたのだ。入所者の3分の2に認知機能の低下がみられ、マスクや手洗いなどを徹底することが難しかった。

   クラスターが発生すると、「負の連鎖」が起きた。職員の感染者が増加し、濃厚接触者も出勤できなくなったり、感染を恐れて出勤しない人も現れた。3人で50人近くの入所者のケアをする事態にもなり、介護崩壊寸前だった。

   さらに追い打ちをかけたのは、感染者全員を病院に移したくても、入院できない状況が生まれたことだった。富山市内に2つある感染症指定医療機関でも感染が相次ぎ、医療崩壊の危険が高まったのだ。重症者以外は受け入れる余裕もなくなり、軽症者は施設で診療と介護を続けることにした。

デイサービスの玉突き休業・縮小

   クラスターの発生は地域の介護サービス体制に深刻な影響を及ぼした。広島県三次市では4月、デイサービスや訪問介護を行う施設が次々と休業・縮小に追い込まれた。クラスター発生の中心となった介護事業所のデイサービス利用者は、複数の事業所を利用していたりして、感染は他の事業所にも広まった。

   最終的に市内の事業所の9割、58事業所が休業・縮小する「休業連鎖」が起きてしまった。これまで週5日、1回1時間の訪問サービスを受けていた94歳で1人暮らしの男性は、週2回、1回30分に縮小され、心配した娘が東京から駆け付けると、今度は感染拡大している東京から来たという理由で、サービスがすべてストップしてしまった。

   取材したNHK社会部の金倫衣記者は「相部屋だったり、食堂で一緒に食事をしたりする構造で、抱きかかえて移動するなど、3密になる機会が多い介護施設では、もともと感染対策は難しいんです」と報告した。

医療施設と提携で感染者分散

   対策は医療との連携だ。クラスターが発生した東京・江東区の北砂ホームは、系列の病院に応援を要請し、医師・看護師チームを派遣してもらった。全員にPCR検査を実施すると半数が陽性。すぐに陽性者を別フロアに隔離するゾーンニングを行い、防護服での治療・介護を徹底した。白石廣照医師は「前例のない野戦病院的な状態だったが、軽症者なら一般病棟と同じ対応ができる」と話す。

   前出の富山の施設では、医師・看護師10人以上の派遣を受けているが、これは行政が必要な人員を派遣する「富山モデル」と呼ばれる仕組みを利用した。行政は介護の協議会にも依頼して、9人の介護士が同施設に派遣されている。

   早期発見につながる検査の拡充も課題だ。淑徳大学の鏡諭教授は「施設で検査を受けられる体制をつくるのが重要です。PCR検査など、受け皿が整っていれば混乱することはないと思います」という。

   武田真一キャスター「介護の現場では検査の遅れが命に直結する場合があるんですね。感染が拡大すれば真っ先に脅かされるのは介護施設です。私たちも感染を防ぐ行動を続けていくべきだと感じました」

   ※NHKクローズアップ現代+(2020年6月2日放送「"介護クラスター" 高齢者の命をどう守る?」