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ウィズ新型コロナでも終わらない感染中傷!いまだにネットに「犯罪者」「外出するな」

   新型コロナウイルスの感染が4月(2020年)に判明した大学生に、当時も今もネットで誹謗中傷やデマが続いている。長男は感染がわかってすぐ大学に報告したが、大学は十分に確認せずに「自宅待機している」と公表し、その後、「大学やアルバイト先に外出していた」と訂正した。これが「このバカ、実名と実家晒し上げろ」「この学生は犯罪者」とバッシングに火をつけた。

   ネット上には長男が「ウソをついた」と書かれ、実際に行ってもいないパチンコ店や居酒屋にまで立ち寄ったことにされた。大学は確認不十分を謝罪したが、長男は通学への不安をぬぐえず、父は「なんでここまでと、(周りの)空間にナイフが飛びかっているような感覚でいます」と怖さを語った。

   2月に46人のクラスター(集団感染)が発生した大阪北区のライブハウスは、客に検査を呼びかけようと店名を公表した途端、ネットやメールで激しい非難が殺到した。オーナーの片山行茂さんは「ここで病気を作ったみたいなイメージがたってしまい、つぶれるしかないかと思いました」という。演奏を動画配信した出演者にも「すぐ家に帰れ」「二度と外に出るな!」というメールがきた。ライブハウスはすでに3カ月間営業を自粛し、まだ再開していない。

   そのライブハウスに職員の1人が入店していた熊本県の介護施設は、一部サービスの提供を中止した。感染の元凶扱いする誹謗中傷が、他の職員たちの家族や出入り業者にまで及んだ。妻やきょうだいの出勤停止、子供の保育園登園拒否、父母のデイケア受け入れ拒否まで発展、被害は70件を超したという。

励ます動きも...クラウドファンディングでライブハウス応援

   大阪のライブハウスには激しいバッシングと正反対に励ましの声も寄せられ、再開へ準備を開始した。クラウドファンディングを始め、40人以上のアーティストと再会や交流を誓う歌も作り、再出発の決意を固めた。

   熊本の介護施設は、地元のコンビニや商店に感染予防対策を説明に回ったことで支持が集まり、手縫いのマスク60枚を寄付してくれる地元企業も現れた。「真正面から対応することで信頼が得られます」(中尾清志事務長)と確信し、中止していたサービスを再開した。

   医療と社会の関わりを研究する武藤香織・東大教授は「コロナウイルスの感染収束には人との接触を絶つことが求められ、その気持ちがいつの間にか怒りや不安に変わります。だからといって、人を攻撃することを許してはいけない」と話す。そうした誹謗中傷にどう対処するかの具体的な方策が問題なのだが、武田真一キャスターは「いわれのない誹謗中傷は決して許してはいけません」と、当然の心構えを強調して締めくくった。

   ※クローズアップ現代+(2020年6月11日放送「新型コロナ バッシングからの再起」)