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新型コロナ自粛でネット通販繁盛!不良品・欠陥商品も横行――安価過ぎるモバイルバッテリーの大容量ウソ

   新型コロナウイルスによる生活自粛で急速に売り上げを伸ばしているインターネット通販で、トラブルも増えている。国民生活センターに寄せられた相談は約6万件と、去年(2019年)の同じ時期の2倍近くに増えている。

   家電やパソコンなど1万点以上を実際に使ったり、分解したりして検証している専門雑誌の編集部では、最も注意すべき製品はスマホなどで使うモバイルバッテリーだという。安価なモバイルバッテリーでは表示偽装が見られる。たとえば、2万6800ミリアンペアと表示してある大容量が売りの商品を分解すると、出てきた2本の電池は容量表記が消されていた。顕微鏡で調べると、電池には1万ミリアンペアと書かれており、合わせても2万ミリアンペアしかない。災害時などに利用できる防水懐中電灯も、15製品中5製品は防水性能はなかった。

  • ネット通販の闇(NHKの番組ホームページより)
    ネット通販の闇(NHKの番組ホームページより)
  • ネット通販の闇(NHKの番組ホームページより)

掃除機充電器から発火!メーカーに連絡取れず泣き寝入り

   ネットで購入した製品が原因で事故に巻き込まれた夫婦がいる。物置部屋から出火し、壁や家財などが焼け、被害額は800万円に上った。消防の調査によって出火の原因と断定されたのは、充電式掃除機に使うバッテリーだった。メーカーが製造した純正品ではなく、中国の業者が製造した安価な互換品だった。メーカーに連絡しても返事がなく、泣き寝入りした。

   互換バッテリーによる火災事故は、分かっているだけで昨年は36件あった。掃除機メーカーや国は注意を呼びかけている。

   欠陥商品は不良品が販売され続ける原因は、通販の仕組みにある。アマゾンや楽天、ヤフーなど大手通販サイト運営者が管理していても、商品を販売するのは「出品者」と呼ばれる大小さまざまな事業者だ。どんな商品を販売するかは出品者次第なのだ。安全基準を満たしていなかった互換バッテリーを販売していた中国の出品者は、「安全性は純正品と変わらない」と不備を認めなかった。九州の出品者は中国の製造業者の「安全な製品だ」という言葉を信じて販売していたという。

   ゲストの麻木久仁子さん(タレント)「災害に備えてソーラーバッテリーを通販で買ったのですが、箱のまま押し入れに入れているのですが、心配になってきました」

   通販サイト側はどう対応しているのか。アマゾン米国本社の不正対策統括副社長は「悪質な250万の出品者が出品した60億個の商品を、事前に差し止めている。が、まだ完全ではない」と話す。楽天やヤフーでも不正な出品がないかパトロールを行っており、不正があれば販売停止にするなどの対策をとっている。アマゾンでは不正な出品があれば返品を受け、出品者に差し戻しているが、それでも抜け道はある。

返品された不正商品のラベルを張り替えて再出品

   ネット通販の怪しい物流拠点が、関東地方の住宅街にあった。受け取る商品は通販会社からの返品で、多い日で900近くが届く。そこでは中国人の知り合いから頼まれてラベルを貼り替えているという。パッケージに貼られたラベルには、どの出品者の何の商品かという情報が含まれている。このラベルを貼り替えることで、問題があって返品された商品でも、簡単に別の出品者の別の商品に装うことができるのだ。こうしたラベルの張替えを1個10~20円で行う業者があるという。

   消費者庁はアマゾンで偽ブランド品を販売していた出品者13社を、公表して処分した。しかし、出品者の連絡先としてアマゾンに登録されていた運転免許証の住所をたどってみると、まったく関係のない日本人のものだった。ほかの出品者も、在留資格やクレジットカードなどの情報はほとんどが偽造だった。結局、出品者の特定はできず、偽名とわかったうえで公表するという異例の事態となった。

   こうした事態を受けて、政府はネット通販事業者に対して、出品者の身元確認をより厳格に行うことを求める法改正を検討している。慶應義塾大学の宮田裕章教授は、「悪質商品を販売しないためのチェックを、昔は卸業者がやっていました。今はプラットフォーマーが連携して作り上げていくことが大事」と話した。

   ※NHKクローズアップ現代+(2020年7月14日「新型コロナで被害拡大 追跡!ネット通販の闇」)