2020年 10月 29日 (木)

<星の子>
「あやしい宗教」を深く信じる両親、思春期のちひろは教えられてきた世界に疑念を抱いていく...。成長した芦田愛菜、心の脆さを見事に演じてさすがだ

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   中学3年生のちひろ(芦田愛菜)は、父(永瀬正敏)と母(原田知世)から愛情たっぷりに育てられた。しかし、その両親は未熟児で生まれ病弱だった幼少期のちひろを治した、怪しい宗教「ひかりの星」を深く信じていた。行き過ぎた宗教活動のせいで、ちひろの姉・まーちゃん(蒔田彩珠)は、ちひろが小学5年生の時に家を出たきりで戻ってこない。

   ある時、ちひろは一目惚れした新任の南先生(岡田将生)に、夜の公園で奇妙な儀式を行う両親を見られてしまう。それをきっかけに、これまで両親に教えられてきた自分の世界に疑念を抱くようになる。

   監督は大森立嗣。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010)や『さよなら渓谷』(2013)、そして未成年による祖父母殺害事件を題材にした長澤まさみ主演の『MOTHER』(2020)など、バイオレンス性のある作品が印象的な監督だが、本作はこれら〝動〟の作品とはまったく対照的な〝静〟の作品といえる。

   しかし「被害者も出ている」という新興宗教は、なにか実在の宗教をベースに描いているのだろう。全国の信者家族が集まる合宿の様子は妙に細かく具体的で、ひやりとさせるものがあった。

  • 「星の子」公式ポスター
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ちひろはこの先どう生きていくのか、観客に託すエンディング

   主演の芦田愛菜は、テレビドラマ『Mother』(2011)やハリウッド映画『パシフィック・リム』(2013)で見せた〝泣きの演技〟が健在。というか、成長とともにさらにパワーアップしていた。憧れの南先生のひと言で途端に目に一杯の涙を浮かべる場面は、思春期ならではの心の脆さを見事に表現していて、さすがの一言に尽きる。

   子役は同年齢のキャラクターを演じることが多いが、もうあと何年かしたら芦田も子役を卒業し、年齢の枠を超えてぐっと演じられる役の幅が広がる。本作でもインパクトをきっちり残したぶん、今後も確実にステップアップしていくことは間違いなさそう。将来に期待感しかないすばらしい演技だった。

   また、岡田将生のイケメンで神経質な教師役もよくハマっていた。劇中で「和製エドワード・ファーロング」と呼ばれていて、一瞬「誰?」と思ったが、そうそう、『ターミネーター2』や『ペット・セメタリー2』で子役として大活躍したあのハリウッド俳優のことだ(ちなみに現在43歳)。なるほど、なかなか上手いことを言う。

   子供の健康だけを願って入信した両親。両親を信じ、大切に思い続けているちひろ。そんなちひろだからこそ偏見なく付き合い、時にはかばったり慰めたりしてくれる友人たち。一方で、自分のことを一番に信じて家を飛び出した姉・まーちゃん。そして、ちひろを心配し、引き取ろうとする伯父(大友康平)。誰も、何も、間違ってはいないはずなのに、なぜか歯車はうまく噛み合わない。

   この先、ちひろはどう生きていくのだろう。エンディングは観客に託すような形で終わる。夜空の端で輝く小さな星を眺めるような、深い余韻が残った。

おススメ度 ☆☆☆☆☆

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