『長崎の鐘』以降、古山裕一(窪田正孝)のもとには仕事が殺到するようになった。そんなある日、裕一が村野鉄男(中村蒼)と雑談をしていると、歌手の藤丸(井上希美)がやってきて、2人を古ぼけた家に連れていった。中にいたのは、変わり果てた佐藤久志(山崎育三郎)だった。薄汚れた服を着て昼間から酒びたりになっている久志は、かつての面影をすっかり失っていた。
聞くと、戦後の農地改革で実家の財産や土地を失い、父親が亡くなってからは酒とばくちで借金まみれだと言う。今は藤丸の世話になり、なんとか生きているというありさまで、まともな会話にもならない。
裕一は久志に、「栄冠は君に輝く」を作詞した人物の話をする
一方、裕一はビルマで出会った新聞記者、大倉憲三(片桐仁)の依頼で、全国高等学校野球選手権大会の大会歌を作曲することになった。
出来上がった『栄冠は君に輝く』を久志に歌ってほしいと願う裕一だが、久志は「同情なんてまっぴらだ」と突き放す。
ある日、姿を消してしまった久志を追って、裕一は福島に行く。久志の父親の一周忌だったのだ。久志は自分が戦時歌謡を歌っていたせいで、父親が戦後につらい目にあったことを打ち明ける。
なんとか久志を立ち直させたい裕一は、劇作家の池田二郎(北村有起哉)に書いてもらった詞で『夜更けの街』を作曲して久志に歌わせる。しかし、久志は制作が終わるやいなや、すぐに酒びたりの生活に戻ってしまった。
裕一は久志を甲子園球場に誘い、『栄冠は君に輝く』を作詞したのは、足のケガで甲子園への夢を絶たれた人物で、だからこそこの詞が書けたのだと話す。「この歌を歌うのは、君じゃないとダメなんだ」と裕一。久志はマウンドへと歩き出した。 (NHK総合あさ8時)