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クラスター発生した旭川の病院が市や保健所を批判 「自衛隊の災害派遣要請を却下した」

   新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。12月2日(2020年)には小池百合子東京都知事が、65歳以上の人、基礎疾患のある人のGoToトラベルで申し込み済み予約の利用自粛を要請するに至った。すでに自粛を表明している北海道は深刻な事態となっている。

   旭川市では11月7日に吉田病院で、22日には旭川厚生病院でクラスター発生が公表されており、12月2日には過去最多の46人の新規感染者が確認された。そんななかで、吉田病院が市の対応を批判した。吉田病院は介助が必要な高齢者が多く入院しており、クラスター発生以降もほぼ毎日感染者が発生している状況。

   こうした状況を受け、吉田病院理事長がホームページで12月1日、「感染症指定医療機関ではなく防護資材、設備に制約のある当院にとって独力での対応が困難であることが当初より明らかであった。関係機関と協議調整を図る過程で様々な不条理や疑問を感じた」と訴えた。

転院かなわず、自衛隊派遣も却下

   吉田病院は、旭川市保健所に対して他病院への転院調整を強く要請したが、願いはかなわなかったという。これに対し保健所は「介助に慣れていない病院が吉田病院の患者を受け入れるのは非常に負担がかかる。転院が必要な患者をセレクトしながら入院調整を図ってきた」と回答。白鴎大学の岡田晴恵教授は「介護施設は看護師や介護士が若いのでサイレントキャリアで感染を広げる可能性もある。病床確保もできていない」とコメント。

   旭川市に対しては、災害認定し自衛隊看護師の派遣などができないか要請したところ、"公共性"を満たさないとの理由で即却下したという。これに対して旭川市の西川将人市長は「11月25日に吉田病院から自衛隊の派遣を道に求めるよう要請されたが、道と協議し"今すぐ判断するのは難しい"と答えた」と述べた。岡田教授は「感染症アウトブレイクの現場はもう災害。ここは自衛隊を入れるべきであった」と解説。

   さらに吉田病院は旭川医科大学病院に対して、大学病院側が吉田病院の患者受け入れを拒否したうえ、医大病院が吉田病院に派遣していた非常勤の医師も引きあげたとして批判。旭川医科大学病院は「学内の取り決めで、1か月以内に院内感染が発生した医療機関への派遣は禁止することになっている。吉田病院だけでなくすべての医療機関が対象」としている。岡田教授は「旭川医科大学病院は基幹病院のため多くの患者を受け入れなければいけない。引きあげざるを得ない」と話した。

   旭川市では5つの基幹病院で感染者を受け入れているが、このうち旭川厚生病院でクラスターが発生したため現在は4病院で患者を受け入れている。基幹病院の旭川医療センターの西村英夫院長は「吉田病院からの新型コロナ患者は医療だけでなく介護も含めてやる必要があり非常に大変。3倍の手間がかかる」と話し、北海道医療大学の塚本容子教授は「看護師は長時間ずっと働いている状況。患者のケアはきちんと行われているがそのほかの清掃などは手が回らず深刻な人手不足」と訴える。

   テレビ朝日コメンテーターの玉川徹は「旭川医大は吉田病院が困っているタイミングで医療者を引きあげるというのはどうだったのか。ただ自衛隊要請を断った市の対応は問題ではないか。災害派遣の条項には医療・防疫が含まれている。要請を出すべきだったのではないかと思う」と指摘。

   女優の高木美保は「吉田病院に残された少人数でケアするのは困難。介助の必要の少ない人を引き取るなど、保健所は細かく調べきめ細かに判断すべきだと思う」とコメント。

   岡田教授は「介護施設はお金がないので防御用品も手に入りにくいし、スタッフを雇えないことが多い。GoToも大事かもしれないが、ここにお金を入れていただきたい」と訴えた。