犯罪被害者家族の悲しみと、未成年犯罪者を理不尽なまでに過保護に守る、現在の法律の矛盾に切り込んだ努力作。全身が正義の塊りの特命係・警部、杉下右京(水谷豊)と、頭では理性がブレーキをかけるが、情の心がそれを許さない哀しい被害者の父親、仁江浜(岸谷五朗)との最後の会話が涙を誘う連続殺人の物語。
元はちゃんとした会社の記者だった仁江浜は、本名が大沼で、今はしがない記事持ち込みのフリーライターである。出産後に亡くなった妻が残した息子と2人、肩を寄せ合って生きてきた。11年前、息子は正義感の強い明るい好青年に育ったが、学校でヤクザの息子のワル一団にからまれ、イジメに遭う。ワルたちが工場に大沼の息子を連れ込む場の横を右京が車で通りかかったが、仕事先に急ぐ。
作者たちが言いたいのは、矯正施設で根っからのワルは更生したりはしないということ。被害者の家族たちは、「犯罪被害者家族の会」を組織して告白しあっているが、彼らの心の奥底の悲痛は決して癒されはしないということ。昔、筆者の仕事仲間の超有名弁護士が、金科玉条のように「未成年犯罪者を護らねばならぬ」と力説して呆れたことがあった。人間の常識ある感情より紙に書かれた法律の優先ぶりは想像を絶するかたくなさであって、今の日本では、被害者より加害者が遥かに大事にされるという理不尽がまかり通っていると思ったのである。この風潮に一石を投じた見ごたえのある作品。(放送2021年1月1日21時~)
(黄蘭)
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