1929(昭和4)年2月。「鶴亀家庭劇」の次の公演で、竹井千代(杉咲花)と天海一平(成田凌)が前座で2人芝居を演じることになった。台本は、みつえ(東野絢香)と福助(井上拓哉)の結婚をモデルに一平が書き上げたものだ。
「好きな人となら死んでもいい」という気持ちにピンと来ない千代は、生き別れた弟・ヨシヲを思い浮かべて演じることにした。
舞台初日、千代の迫真の演技に引き込まれた一平は思わず千代に口づけしてしまう。
検閲の警察官がそれを発見して騒ぎになったが、なんとか公演中止は免れた。しかしファーストキスを思わぬ形で奪われた千代はショックが隠せない。
鶴亀に脅迫電話、その犯人は...
夜、千代と一平が歩いていると男が現れて一平を殴りつけた。「ようも姉やんを傷もんにしてくれたな」というその男は、ヨシヲ(倉悠貴)だった。
千代の喜びもつかの間、すぐにヨシヲがやくざ者と関係していることが分かる。それどころか、ヨシヲは「公演を続けるならえびす座を燃やす」と脅迫電話をかけ、公演中止に追い込んできた。鶴亀をつぶそうともくろむ誰かに雇われていたのだ。
千代は「お金なら自分が稼ぐから、悪い連中とは手を切ってくれ」と懇願するが、ヨシヲは聞く耳を持たない。
指示を受け、えびす座に火をつけようとしていたヨシヲのところに千代と一平が駆けつけた。社長の大山鶴蔵(中村鴈治郎)が首謀者と話をつけ、ヨシヲはすでに仲間から捨てられていた。
「そんな人たちは本当の仲間ではない」と千代が言うと、ヨシヲは「俺にはあの人らしか、いてへんねん」と返した。行くあてもなく飢えていた子どものヨシヲを救ってくれたのが彼らだったからだ。
ヨシヲは一平から、「弟のためなら死ねる」と千代が言っていたと聞いていた。自分がした悪事を知った今もなお、変わらない千代の愛情に心が揺れた。でも自分の居場所はここではない。
立ち去ろうとするヨシヲに、千代は母の形見のガラス玉を渡した。
(NHK総合あさ8時放送)