2024年 4月 24日 (水)

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岡庭由征 「酒鬼薔薇聖斗」と酷似する心を病んだ少年時代――ナイフの血をなめ性的興奮

   事件ものに強い週刊新潮が、一昨年(2019年)の9月23日未明、茨城県境町に住む小林光則さん(当時48歳)と、妻の美和さん(50歳)を殺害し、長男、次女にも重傷を負わせた岡庭由征(よしゆき・26歳)容疑者について詳しい特集を組んでいる。

   新潮がいうように、1997年に兵庫県神戸市須磨区で発生した連続殺傷事件で「酒鬼薔薇聖斗」と名乗った14歳(当時)の少年によく似ている。岡庭も、高校中退後の2011年に、二人の少女に相次いで刃物で襲いかかり、埼玉県警に逮捕されている。当時は16歳だったため、さいたま地裁は「保護処分が相当」と結論づけ、家裁の審判を経て、医療少年院へ送られた。

   新潮は、少年法で護られたため刑事罰を免れ、社会に解き放たれ岡庭は、残虐性を肥大化させ、人命を奪うに至ったと、少年法の"不備"を衝く。たしかに、酒鬼薔薇との共通点は多い。ネットで父親の名前で多数のナイフを購入し、猫を次々に殺している。通っていた高校に猫の首とナイフを持って行って、クラスに見せている。先の少女たちを刺した包丁を持ち帰り、自分の部屋で舐めている。法廷で岡庭は、血を舐めると性的興奮を覚え、自慰行為をしたと供述している。

   父親は息子がナイフを集め、猫などを殺していることにも無関心で、母親は「家の中だけのことと考えており、あまり深刻に受け止めていませんでした」と、危機感がなかったと供述している。父親は無関心で母親は息子のいうがままで、おばあちゃん子だった点も酒鬼薔薇と酷似している。

   残虐な行動によって性的欲求を満たそうと考えた岡庭が、ターゲットに選んだのが、自宅から30キロも離れている茨城県境町に住む小林家だったというのだ。ここは広い敷地に鬱蒼と木が茂り、家があることは地元の人間以外は知らないという。

   茨城県警は怨恨の線で交遊関係を洗っていたが、その捜査方針を転換し、流しの犯行と見て、類似事件の前歴者の洗い出しに注力し、県外にまで範囲を広げたところ、昨年6月に岡庭の名前が浮上したそうだ。岡庭の行動確認を続けながら、昨年11月に、茨城と埼玉と県警が自宅に突入して、爆弾をつくろうとしていた容疑で逮捕する。その後も地道な捜査が続けられ、現場に残されていた「足跡」が、岡庭が事件前に購入していたレインブーツと合い、殺人容疑で逮捕したのである。事件から593日が経っていた。

   酒薔薇事件後に少年法が改正され、16歳以上で殺人などの重大な犯罪を犯した者は、原則として刑事裁判に回すことになり、14歳、15歳でも家庭裁判所の判断で刑事裁判に回すことができるようになった。

   今回のケースのように、甘い保護処分で数年後に社会に放り出され、両親も責任放棄してしまえば、再び犯罪を犯す可能性は高いといわざるを得ない。むやみに厳罰主義にせよという意見には組しないが、こうした心を病んだ少年を、どうやれば社会に適合させ、暮らしていけるようにするにはどういう方策があるのかを、この事件を機に、議論を深めるべきであろう。(文中一部敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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