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「俺の家の話」寿一(長瀬智也)の喪失感、今も 【2021年マイベスト・ドラマ】

   「大豆田とわ子と三人の元夫」(関西テレビ、フジテレビ系)も良かったし、「コントが始まる」(日本テレビ系)も捨てがたい。でもやっぱりこれは外せない。筆者にとって、2021年のベスト1ドラマは「俺の家の話」(TBS系、1~3月放送)だ。

   このドラマを最後に、長瀬智也が表舞台から去った。最終回、長瀬演じる観山寿一が実は亡くなっていたということがわかる。突然消えてしまった寿一。彼、不在のまま、それでも家族の日常は続いていく。寿一を失った家族はそのまま私たち視聴者でもあった。その喪失感は今も拭えないままだ。

  • 日本テレビの「俺の家の話」番組サイトより(放送は終了)
    日本テレビの「俺の家の話」番組サイトより(放送は終了)
  • 日本テレビの「俺の家の話」番組サイトより(放送は終了)

クドカン&長瀬ドラマの「集大成」

   脚本の宮藤官九郎と長瀬がテレビドラマでタッグを組んだ作品は4作。「池袋ウエストゲートパーク」「タイガー&ドラゴン」「うぬぼれ刑事」、そして、この「俺の家の話」。どれも俳優・長瀬智也にとっての代表作と呼ぶにふさわしいが、とりわけ最後の作品となった「俺の家の話」は、その集大成で、彼の魅力が随所に溢れ、素晴らしい作品であり、新しいステージへと旅立つ長瀬へのクドカンからのはなむけのようにも思えた。

   ドラマも本当によく出来ていた。『プロレス』と古典芸能である『能』。一見すると相反する2つの世界を、<仮面(マスクと能面>で見事に繋いだ。親の介護という切実な問題を取り上げながら、深刻ぶることなく、クドカンお得意の細やかな伏線と、小ネタの数々を交えた笑いあり涙ありの心温まるホームドラマに仕上げた。

   「タイガー&ドラゴン」では師匠と弟子だった、西田敏行と長瀬が親子を演じるのも感慨深く、西田の重厚かつ軽ろやかで柔軟な演技にベテラン俳優の凄みを見た。特に、最終回での認知症の父にしか見えない息子と会話するシーンは、人買いにさらわれ、生き別れになった息子を捜す狂乱した母親が息子の亡霊と出会う能「隅田川」と重ねられ、涙無くしては見られない名場面だった。

   クドカン&長瀬のドラマをもっと見たかった。ブリザード寿のように覆面レスラーでもいいから、いつかまた戻ってきてくれることを願ってやまない。

(大熊猫)