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家庭ごみ有料化 分別促す工夫が鍵

   生ごみなどの家庭ごみの収集を有料化する自治体が増えている。全国の自治体の約4割がすでに導入しているが、あまり効果を上げられない自治体もある。消費者に分別を促す工夫ができるかどうかが、「ごみ減量」成功の鍵だ。

神奈川県大和市で使用されている有料ごみ袋と広報資料。有料化で減量はできるのか
神奈川県大和市で使用されている有料ごみ袋と広報資料。有料化で減量はできるのか

   神奈川県の中央部にある大和やまとは、2006年7月1日に有料化に踏み切った。「家庭系有料指定ごみ袋」と呼ばれる専用の袋に入れてごみを出す。価格は、中型の20リットルで1枚あたり40円。一般に売られているごみ袋が10円弱なので、手数料は30円強。指定以外の袋で出されたごみは、原則として回収してもらえない。ただ、ペットボトル、空き缶、紙パックなどのリサイクル可能な「資源ごみ」は、これまでどおり無料で回収してもらえる。

   大和市の環境総務課は、JINビジネスニュースの取材に対して、有料化の狙いを「市民の意識を高めて、ごみの減量に結びつけること」だと説明する。これに対する住民の反応はどうなのか。大和市に住むある主婦は、

「これまでは、燃えるものは何でも『燃えるごみ』として捨てていたが、無料の『資源ごみ』を分別するようになったので、『燃えるごみ』の量は、ものすごく少なくなった」

と話す。大和市については、出だし好調のようだ。

1枚15円の指定ごみ袋を、一気に50円に値上げ

   一方、政令都市で初めて有料化に踏み切った北九州市では、06年7月3日から、「減量意識の向上」を理由に、従来は1枚15円だった45リットル入りの指定ごみ袋を、一気に50円に引き上げた。97年度に32万5,000トンあった家庭系ごみ(一部事業系を含む)が、98年度は30万7,000トンと6%減少したものの、その後は横ばいが続いていたためだ。値上げのほかにも、これまで無料で収集されていたペットボトルやかん・びんも分別して、種類別に定められた有料袋に入れて出すことになった。「値上げ」と「分別」の両方を組み合わせて、現在年間およそ25万トン出ている家庭ごみを07年度までに、20%削減することを目指す。

   有料化したものの、一度は有料化中止に追い込まれ、それでも再び有料化に踏み切った、という自治体もある。

   兵庫県村岡町(当時)は、今から約40年前の69年に、財政の悪化をきっかけに有料化をスタートした。当初5年間は減量効果が見られたものの、時間の経過にともなって生ごみの量が増えたり、町内を流れる川への不法投棄が相次ぐなどしたため、2度の制度改正を経て91年10月、一般家庭の生ごみの収集を無料化せざるを得なくなった。それ以降、生ごみの収集量は増え続けた。

単に有料化するだけではうまくいかない

   その後94年に、隣接する2自治体と共同で使用する最新鋭のごみ消却施設「矢田川レインボー」が完成し、再び有料化に踏み切った。今度は、単に有料化するだけでなく、燃えるごみ・燃えないごみ・粗大ごみなど5種類に分別した上で、それぞれ指定の有料袋に入れる。「分別した上で専用の有料袋を使用」という点で、北九州市の方法と似ている。この方式を導入して、生ごみの量は38%も減少したという。旧村岡町が05年4月に周辺自治体と合併してできた香美かみ・健康福祉部町民課は、JINビジネスニュースの取材に対して「94年の有料化以来、ごみの量は横ばいもしくは微増」を保っている、と語った。

   単に有料化するだけではなく、「資源ごみは無料で回収する」「ごみの種類別に専用袋を用意する」など、分別を促すための政策も同時に行うことが、ごみ減量には重要なようだ。

   このごみ有料化、東洋大学山谷修作教授がまとめた2005年10月末の「全国都市の家庭ごみ有料化実施状況」によると、調査対象の全国776市区のうち、すでに有料化を行っているのは全体の42.3%の328市にも及ぶ。政令指定都市では、北九州市のほかに、すでに福岡市が有料化を導入しているほか、京都市が06年10月の導入を決めている。札幌市仙台市なども導入を検討している。各地それぞれの試行錯誤が続きそうだ。