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天然ガス自動車導入や車両運行規制 「近畿から『黒煙ゼロ』」シンポ開催

   近畿地区の自治体と国が連携して大気環境の改善を目指す「近畿地区広域 黒煙ゼロの街づくりシンポジウム」(主催: 日本ガス協会)が2007年10月26日、大阪市中央公会堂(大阪市北区)で開かれた。天然ガス自動車の導入推進や、黒煙を排出する車両の運行規制など、各地の自治体の試みなどが紹介された。周辺自治体のみならず08年のサミットを控えた北海道の札幌市も参加。「黒煙ゼロの街」を目指すアピールが発表され、約200人 (主催者調べ)の聴衆が熱心に聞き入っていた。

天然ガス自動車が世界の主流

喜多さんからは天然ガス自動車家庭用充てん機と車のデザインスケッチも発表された
喜多さんからは天然ガス自動車家庭用充てん機と車のデザインスケッチも発表された

   近畿地区では、「近畿都市圏一円を『黒煙ゼロ』の街にしたい」と、黒煙を全く排出しないとされる天然ガス自動車の普及を推進するなどの活動を行っている。例えば、京都市や大阪市などが独自に「みやこエコカー普及活動」「御堂筋エコロード推進事業」など、モデル地域を設定。自治体ごとの取り組みが進んできた。そんな中、国土交通省近畿運輸局も

「これまで各地で『点的』に行われてきた活動を『面的』に拡大していきたい」

とサポート、国と自治体が連携して普及を進めることになった。

   基調講演では、04年から06年にかけて「グッドデザイン賞」の審査委員長を務め、シャープの液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」のデザインに携わったことでも知られる、工業デザイナーの喜多俊之さん

「国内では『エコカーと言えばハイブリッドカー』という向きがあるが、ハイブリッドカーよりも地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)や人体に有害な窒素酸化物NOxを出さないのが天然ガス自動車。そして黒煙は全く排出しない。すでに世界には、ハイブリッド車をはるかに上回る650万台の天然ガス自動車が走っているが、意外に知られていない」

と、「エコカー」としての天然ガス自動車の優位性を強調。天然ガス自動車は、通常の乗用車のガソリンスタンドにあたるガス充てん設備などのインフラ整備が普及へのネックとなってきた。喜多さんからは、天然ガス自動車の家庭向けガス充てん機のデザインスケッチも発表された。

「自宅で充電できるハイブリッド車は、1回の充電で数10kmしか走らないのに対して、天然ガス自動車は1回充てんすれば300km近く走れる。都市部には、すでにガスが整備されているので、それを活用するのが便利」

と、天然ガス自動車の実用性をアピールしていた。

札幌市も「天然ガス自動車普及推進モデル地域」を目指す

シンポジウムの最後には「近畿地区広域黒煙ゼロ宣言」が発表された
シンポジウムの最後には「近畿地区広域黒煙ゼロ宣言」が発表された

   続いて、天然ガス自動車の推進を積極的に進める10自治体の「黒煙ゼロ」に向けての取り組みを紹介。中でも、中央卸市場の構内車両約850台すべてを、6年間かけて電動から天然ガス自動車に順次切り替えたという札幌市は、

「天然ガス自動車は黒煙やにおいをほとんど出さないので、市場に野菜や魚の匂いが戻ってきた」

と、天然ガス自動車のクリーン性を強調した。08年に北海道で開催されるサミットに向けて、国土交通省が推進する「天然ガス自動車モデル地域」の指定を目指したい、と意気込んでいた。

   そして大阪出身の作家、中谷彰宏さんが「天然ガス自動車で関西の環境を守ろう!」と題した講演を行い、最後に今後の活動方針などをまとめた「近畿地区広域黒煙ゼロ宣言」が国土交通省近畿運輸局から発表され、「近畿地区が一体となって『黒煙ゼロ』の街づくりを実現しよう」と訴えた。

   喜多さんはイベント後J-CASTニュースの取材に応じ、

「大阪、近畿地区から『黒煙ゼロ』の動きを日本全体、アジアに発信していければ」

と、今度の活動の広がりに期待を寄せた。