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豊田市、田原市が法人税収9割減 トヨタ「城下町」未曽有の事態

   「トヨタ・ショック」は地方自治体にも飛び火した。トヨタ自動車の業績悪化で、トヨタの「城下町」と呼ばれる愛知県豊田市、田原市が2009年度の法人市民税が9割もの減収になると試算している。岡崎市、豊橋市など他の自治体もかなり減収になるところが出ている。自治体関係者は「これが2、3年続くとなれば恐ろしい状況になる。対策の講じようがない」と頭を抱えている。

「私の知りうる限り、未曽有の事態」と豊田市長

   トヨタは世界金融危機の影響で自動車の販売台数が低下。09年3月期の営業利益は前期比74%減の6千億円に落ち込むと発表。工場停止などを含む生産の削減を行い、9000人近くいた期間従業員も09年3月を目処に3000人に縮小する。こうしたことが「トヨタ・ショック」として株価や景気に影響を与えているが、トヨタの「城下町」と言われる市町村の財政にも今後大きな影を落としそうだ。

   愛知県田原市の08年の予算は316億円。法人市民税収入は同70億円を見込んでいる。一方、法人市民税の9割以上がトヨタ関連企業からの収入。08年11月6日にトヨタが発表した業績見通しで試算したところ、09年度の法人市民税の減収は60億円。08年度のトヨタへの還付金を合わせると75億円の減収になるという。田原市役所はJ-CASTニュースの取材に対し、

「ここ2、3年の税収は非常に良かったため、天と地ほどの差になる。09年度は貯蓄を切り崩したり、街の整備計画などを先延ばしするなどして乗り切れるが、今回のような減収が2、3年続くとなれば非常に厳しい」

と打ち明ける。

   豊田市も09年度の法人市民税は08年より9割減になるとの見通しを発表した。実に400億円の減収。08年度内に支払わなければならない還付金も150億円程度になりそうだという。愛知県豊田市の鈴木公平市長は08年12月8日の市議会本会議で、

「このような財政上の急変は、私の知りうる限り、未曽有の事態。全庁をあげて対処しなければならない」(朝日新聞08年12月9日)

と表明。単年度で整備予定だった道路を複数年にしたり、ハコモノの着工時期をずらしたりする方法を検討しているという。

岡崎市と豊橋市、それに福岡県宮若市も減収

   このほか、岡崎市と豊橋市が09年度は30億円程度の法人市民税が減るとの見通しを示し、工場のある福岡県宮若市も同7億円減るとの試算を出した。宮若市役所はJ-CASTニュースの取材に対し、

「ピンチと言われればそうなる。世界経済は一定の回復はするのだろうが、再来年の夏以降に回復するのではないか、という専門家もいる。その間にどう私たちは税収減にどう対応していくか、それが問題だ」

と話した。

   「城下町」だけにトヨタの動向が今後の財政を大きく左右するのは確か。

「世界情勢の変化の影響が大きいのでトヨタに苦情をいうことはできないが、市のためというよりも、トヨタの復活なくして、日本経済は停滞から抜けられない」

と話す市の関係者がいる。また、

「トヨタと市は運命共同体でこれまで生きてきた。仮に市の財政が悪くなれば、トヨタは何らかの施策を打ち出し、市民の雇用確保など、手を差し伸べてくれるだろう」

と期待する関係者もいる。

   トヨタはこうした「城下町」の状況についてどう考えているのだろうか。同社広報はJ-CASTニュースに対し、

「私たちは一納税者の立場にすぎませんので、特にコメントすることはありません」

とだけ答えた。