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「体力テスト」結果ですら公表しない 教育委員会お決まりの理屈

   文部科学省が小学5年生と中学2年生を対象に実施した「全国体力テスト」を巡って、結果を公表するかどうか市町村の教育委員会が揺れている。大阪市と京都市が公表を決めたものの、他の市町村では躊躇しているというのが現状だ。公表によって比較され、教育現場にしわ寄せがいく、といった理解不能な理由がまかり通るのはなぜなのか。

学力テストのような過度な競争は生まない?

   「全国体力・運動能力、運動習慣調査(全国体力テスト)」の結果が文部科学省から発表されたのは2009年2月21日。ハンドボール投げや50メートル走など8種目の結果を合計し、都道府県別順位が示された。同省からは、「過度な競争や序列化を避ける」という理由で市町村のランキングは公表されないものの、市町村の教育委員会独自の判断で個別に公表できる。

   大阪の橋下徹知事は09年1月20日に「市町村別で公表してもらえば、学校現場の意識改革になる」と報道陣に話した。秋田県の寺田典城知事も09年1月26日の定例記者会見で、

「私はオープンにすべきだと思う」

と市町村別結果を公表すべきとの考えを示した。同知事は08年に行われた「全国学力テスト」の結果を、県教委の反対を押し切り、市町村ごとの科目別正答率を県のホームページで公表した経緯がある。

   大阪市教育委員会は「全国体力テスト」の結果を09年2月にも公表することを09年1月27日に決めた。その理由を

「実施したものについては市民に周知させ、説明責任を果たさなければならない。公表時には数字のみではなく、生活習慣の改善策なども盛り込むようにしたい」

J-CASTニュースに語った。京都市も公表を決めた。毎年、体育の日に6歳以上に実施している「新体力テスト」の結果を公表しているが、

「学力テストとは違い、過度な競争を生むとは思えない」

と京都市教育委員会は説明する。また、仙台市は文科省が発表した同日に仙台市の結果を記者発表した。ただ、今後ホームページなどに掲載する予定はないそうだ。

「公表すれば教育現場が苦しくなる」

   しかし、公表を決めたと報道されている市町村はこれら僅かで、他の市町村は公表するかどうか迷っている。今回のテストで上位にランクされた県庁所在地の市は、「公表はしません」という。その理由を、

「結果が低いよりも高いにこしたことはなく、結局は比較され、低い所にシワ寄せが行き教育現場が苦しくなる」

と打ち明ける。

   ある教育委員会関係者はJ-CASTニュースの取材に対し、市町村が公表しようとしない理由は、先の「学力テスト」結果を公表するかどうか大混乱した影響を引き摺っていることと、「学力テスト」に比べ関心が低く、公表するかしないかの論議すら行われていない自治体が多いのではないか、と推測する。この関係者は、

「1985年に実施された『体力テスト』の抽出調査に比べ、結果が悪いのは誰もがわかっていたこと。それならば、改善するための資料として役立てるため、市町村の結果を全部オープンにしたほうがいいと思っている」

と話している。