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他社のトップランナー招く「ガチンコ交流会」を開催しよう

   自社内だけでいろいろ考えていても、従来の視点を脱却できずに、どうしても壁を打ち破れない…。そんなときは、現場が「他流試合型の異業種交流会」を企画し、他社のトップランナーを呼んで講演をしてもらってはどうか。もちろん、お返しに自社の成績優秀者を派遣することが前提となるから、ギブアンドテイクの意識が必要だ。

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現場発の他流試合で「新しい方法論」を注入する

   バブル真っ只中のころ、「異業種交流会」というのが流行った。あるコネや企画で集まった社員や経営者たちが、名刺を交換しながら飲み食いする会だ。しかし、相手の都合を考えない売り込みが目立ったりして、ヒントとなる情報を得られることは少なく、名刺の枚数ほどには成果が上がることはなかった。

   一方で、もっと真剣勝負の交流の場もある。例えば、クライアントから出された「お題」に対して優れた提案を出し合う「企画コンペ」には、さまざまな視点での方法論が出され、刺激的で有意義な会となる場合が多い。しかし、企画コンペは、本来は仕事を取り合う場であって、他社との交流を目的としたものではない。

   このような「異業種交流会」と「企画コンペ」の中間にあるような交流の場があれば、面白いのではないだろうか。例えば「トップセールス交換会」などという名称で、各社のトップ営業を招き、講演やロールプレイング、懇親会をセットにしたような会だ。

   もちろん「交換会」というからには、講演してもらった会社に対して、自社からも成績優秀者を講師として派遣して、ノウハウを交換することになる。同じ職種でも業界が違えば、工夫次第で利害が相反しない建設的交流にすることができるだろう。営業だけでなく「トッププログラマー」や「トッププランナー」の交換でもいい。

   私も前職でこのような会に参加したことがあるが、いわゆる「勉強会」の中では飛び抜けて刺激的な経験だった。同じ目線や熱意で交流できる相手との、1社対1社のガチンコ試合である。お互いにナレッジや方法論が共有・交換でき、短時間だが濃密な交流を得られたものだ。確か、平日の夜に開催されていたと思う。

「言いだしっぺ」が周囲を巻き込み職場全体を活気付けよう

   この「トップセールス交換会」では、国内最大手の証券会社や、外資系のIT企業などのトップセールスが登場し、「なるほどっ!」と唸らされる営業の技を紹介してくれた。営業現場をロールプレイングで再現してくれるので、ライブ感があり、勘どころをつかむことができた。同じ法人営業で、同じ業界に対して営業をかけていたために、重なるノウハウが多かったことがよかったのだと思う。

   こんな秀逸な他流試合は、誰が企画していたのだろうか。「研修」という位置づけではなかったので、人事部主催でないのは確かだ。上司や先輩たちが個人的なコネを活かして、非公式に依頼していたのではないかと推測する。

   若手社員の勉強のために、このような会の開催に漕ぎつけた先輩や上司は、本当に素晴らしかったと思う。情報漏えいのリスクなどを盾に「問題がある」と言うだけなら、誰でもできる。特にいまの時代は、そんな社内評論家の存在は枚挙に暇がない。しかし、もろもろの問題をクリアしながら実行に漕ぎつけ、メリットを獲得することのできる人は、いまも昔も本当に貴重だ。

   企画・実施にあたっては、会社に届け出ておくとしても、研修を補完する形として「現場」で完結させたい。この手の取り組みは、公式の研修となると大掛かりになり、形式的になってしまうおそれもあるからだ。公式、非公式の中間くらいの距離感で実施できれば、むしろベストだ。「言いだしっぺ」が音頭をとって、周囲を巻き込みながら進めることで、職場全体が活気づくという効果もあるだろう。

大塚 寿

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