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日本型雇用の寿命 せいぜい「あと10年」だ

   先日、学生向けの就職セミナーで講師をつとめたのだが、会場のもの凄い熱気に驚いた。質疑応答だけで1時間以上におよび、最後はクタクタに疲れ切ってしまった。

   それだけ、今の就職活動がシビアだということだろう。彼ら自身、日本社会に重大な質的変化が起きつつあるのを、肌で感じている様子だった。

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進む「従来型学歴」の形骸化、実務教育に注目

   かつて企業は、終身雇用向けの無難な人材を求め、教育サイドもそれに応えるべく、受験エリートをせっせと世に送り出し続けてきた。

   受験というヴァーチャルな空間で一定の成果を挙げることのできた人材は、終身雇用という箱庭の中でも一定の成果を上げられる可能性が高いと企業側も判断したためだ。

   ところが、その正のサイクルは壊れつつある。

   企業は衰退トレンドを変える原動力となるような人材を求めつつも、終身雇用に代わる制度はいまだ構築できていない。「3年で辞める若者」というのは、そのギャップの副産物と言っていい。

   一方で教育の側も、自らに求められている役割の変化が把握しきれずに戸惑うばかりだ。

   ただ、今後の方向性自体は明らかだ。大手の海外採用強化に見られるように、基本的には国内のホワイトカラー労働市場も、グローバルな労働市場との統合に進むだろう。

   従来型学歴の形骸化が指摘される中、徹底的な実務教育と英語教育を徹底している秋田の国際教養大や大分のAPU(立命館アジア太平洋大学)が企業から高い評価を受けている現実は、この方向性を指し示している。

   ところで、会の最後にされた一つの質問が印象に残った。

「いつ、日本型雇用は変わるのでしょうか?」

日本型雇用の「終焉」で若者はトクをする

   僕の答えは、だいたい10年後。完全ではないにせよ、今とは大きく姿が変わり、終身雇用や年功序列といったキーワードは大幅に薄まっているはずだ。

   理由は簡単で、こてこての日本人以外に対し“横並び昇給”とか“全国転勤”とか「有休は職場の空気を読んで使いなさい」なんてローカルルールは通用しないから。

   そういった日本名物慣習はすべて日本型雇用に起因するので、本気で人材のグローバル化を進めるなら、日本型雇用にメスを入れるしかない。

「流動化の議論すら始まっていないのに、本当にそんなことは可能なのか?」

と疑問に思う人もいるかもしれないが、それが達成できない企業は大手であったとしても、10年で淘汰されるだろう。

   よって、日本企業が変わろうが変われまいが、どちらにせよ日本型雇用は終焉を迎えているはずだ。

   「終焉」と聞くと不安がる人もいるかもしれないが、心配はいらない。いつも言っているように、日本型雇用が崩れて困るのはせいぜい2、3割の正社員たちで、若手や中小企業、非正規雇用労働者にとっては、むしろそれによるメリットの方が大きいはずである。

城 繁幸

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