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日本すっぴん協会が見据える「10年後のカスタマー」

   ミス・ユニバースのファイナリスト、ミスキャン候補の現役女子大生、人気読者モデル…。美のアイコン的存在である彼女たちが、自らのすっぴん姿を披露し話題になっているサイトがある。それが「日本すっぴん協会」だ。

   サイトでは、彼女たちが実践している美容法や普段使用している美容アイテムに関するインタビュー記事、すっぴん顔のパジャマ姿で撮影した写真を公開。700以上のいいね!と650以上のツイート、200を超えるはてブがつく盛り上がりを見せている。

自社製品より「キレイな肌でありたい気持ち」を刺激

日本すっぴん協会は人気美容ブロガーでライターの岡本静香さんが会長を務めている
日本すっぴん協会は人気美容ブロガーでライターの岡本静香さんが会長を務めている

   このサイトを運営するのは、アンチエイジング化粧品などを製造・販売する再春館製薬所の子会社、あゆみ株式会社。「やはり化粧品会社のマーケティングだったのか」と納得するが、少し気になる点が残る。

   「すっぴん協会」のサイトに登場するのは、20代の若い女性が中心だ。一方、再春館製薬所の得意分野は「30代からの基礎化粧品」であり、商品ラインアップは直接マッチしない。

   サイト内では、もっぱら「すっぴん美肌づくりの作法」について取り上げ、肝心の自社商品は登場しない。このようなサイトが、企業のメリットにどうつながるのか。サイトのコンセプトについて、運営会社あゆみの運営担当者に話を聞いてみた。

「スキンケアの市場拡大を促すためには、女性に対して『美肌づくりの情報』を届けることが大事だと思います。そのためには、まずは企業を離れて、女性にとってためになる情報発信をすることが必要です。このサイトで若い女の子たちが、スキンケアについてきちんと向き合うようになったり、肌の悩みを解決できるようになれば成功だと思います」

   女性にとって、肌の悩みはいつだって付きもの。すっぴんを誇る若い女性たちも、年齢を重ねて肌の衰えを迎えることは避けられない。サイト訪問者の10年後を見据えて、美肌づくりの必要性を感じて欲しいという裏のねらいがあると推測できる。

   また、将来のインフルエンサー(他の女性に影響を与える人)となる「美容に関心の高い女性」との関係構築も期待できるだろう。

SNSで形成できた多くの女性たちとのつながり

   企業サイトを作るとき、社内のさまざまな思惑から「自社で発信したい情報」が満載されているものになりがちだ。しかしそれではユーザーが集まらないし、SNSで拡散したりリンクをはったりしようと思わないだろう。

   自社の事業分野において、いま女性が関心をもっている分野は何なのか。そこに照準を当てながら、サイト訪問者が親しみをもって参加しているような感覚になれるサイトを作らなければ、誰にも見られないものになってしまう。

「サイトを立ち上げたときには、『かわいい子コンテンツなんて男が集まるだけ』『すっぴんなんて披露したら女の子に嫌われる』という反対意見もウェブで上がりました。でも、サイトのコンテンツはまじめな美容専門情報です。ツイッターのフォロワーの9割、フェイスブックのファンの7割が女性ですので、情報を届けたい方々にきちんと届けられていると思います」

   サイトのコンテンツに、注目度の高いキーワードを入れることにも工夫している。最近では「夏疲れ肌」というキーワードなどで検索結果の1位を獲得するようになった。

   当面のサイトの成果指標は「日本すっぴん協会」サイト自体のアクセス数と、SNSコミュニティの充実が中心となるが、自社商品にとらわれずに出発したサイトづくりが、今後どう自社のマーケティングに反映されていくか興味深いところだ。(岡 徳之