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「ロールモデル不在」で迷う女子は、「コリン星」をめざす!? 小倉優子が注目される理由

   最近よく、「今の女性たちにはロールモデルがない」なんて言葉を耳にします。ロールモデルとは、生き方のお手本といったかんじでしょうか。今回取り上げるのは、それにまつわる「ロールモデル厨」です。仕事と家庭の両立もよし、専業主婦もよし、と選択肢が増えるなか、ある特定のロールモデルについて、過度にこだわる人たちを指す言葉です……って、私の造語ですが(たぶん)。

   お手本がないから、一部の女性たちの間では「いっそ、専業主婦になる方が幸せなのでは」との思惑も広がっています。そんなムードもあって、人気が急上昇しているのが、ママタレの小倉優子さん。「仕事はセーブ、大事なのは家事と子育て!」と言い切る彼女が、人気を集めるにはそれなりの理由があるようです。

女子の7割強「ロールモデルがいない」

憧れの先輩は……
憧れの先輩は……

   ウエディングパーク(東京・渋谷)が、20~30代の働く女性300人に対し行ったアンケート(2014年4月発表)のなかで、「周囲に『こんな女性に将来はなりたい』と思うような憧れの働く女性はいますか」と尋ねたところ、74.3%が「いない」と回答したそうです。まさに、「今どきの女性にはロールモデルがない」ことを裏付けるような調査結果。

   そもそも、出産前後で退職する母親の割合は、減少傾向とはいえ、まだまだ半数を超えています(厚生労働省調査、2010年時)。多くの女子は、出産後も会社を辞めずにフルタイムで働く先輩を目にする機会が少ない。さりとて、専業主婦になるには経済的に不安があるのも事実。そういう意味では「ロールモデルがいない」のでしょう。

   この手の調査結果をもって、「女性にはロールモデルが必要だ!」と熱く語ったり、「ロールモデルがいないと嘆く前に、与えられた仕事を精一杯頑張りなさい!」と叱咤激励したりするようなエライ人も、けっこう多いのでした。

   一方、働く女子に理想の働き方を尋ねると、「結婚・出産に関わらず、今と変わらずに働く」というキャリア追求派は4割、「結婚・出産後は仕事を減らす」、ゆるキャリ派が4割。専業主婦派も2割います。後者2項目を合わせれば、全体としては、家庭を重視したい人がやや多いと言えそうです。

ロールモデルはいないけど、憧れは小倉優子

   「ゆるキャリ」を目指す女性たちから人気なのは、先にも触れた、ママタレの小倉優子さんです。現在30歳の彼女は、「こりん星」からやって来たグラドルとして活躍した後、ヘアメイクアーティストと結婚。一児の母となった今は、仕事をセーブしつつ、毎号のように「おしゃれなママ向け雑誌」の表紙を飾っています。レシピ本は12万部超のベストセラー。家庭を大事にしつつ、自己実現的な仕事をする彼女を「いいなぁ」と思うアラサー女子は多いのです。夫が「実業家」や「野球選手」などではなく、ヘアメイクアーティストというのも身近な感じで好感がもてる。

   ただ、それはあくまで淡い憧れの「いいなぁ」であって、ロールモデルとして彼女を設定して、それを目指すというわけではありません。芸能人だからこそ実現可能、といった側面を冷静に分析しているのでしょう。

   そもそも働く女性の多くは、「ロールモデル」なんて意識する暇もなく、目の前の仕事に追われているのが現状です。「ロールモデル、ロールモデル……」と呪文のように繰り返しているのは、◯◯アドバイザーやコメンテーターなど、「現場を知っているようで知らない人たち」だけなのかもしれません。彼・彼女らの言う「ロールモデル」って、実は「フルタイムで働きながら、子育ても頑張るロールモデル」だったりします。このようにやたらと「両立のロールモデル」にこだわる人たちのことを、「ロールモデル厨」と呼びたいと思います。

   そんな「ロールモデル厨」の存在が、「キャリアに迷う女性」を増やしているのかもしれません。一見逆の立場の、「ロールモデルがいなくても、一生懸命頑張ればいいんです!」と励ます専門家たちも、かえって彼女たちを不安にさせているようにも見えます。若い女性が、「身近にロールモデルはいないけど、憧れは小倉優子」となるのも何となく分かる気がします。(北条かや)