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「資生堂ショック」は、本当に「ショック」か? 働く女子に聞いてみた

   11月(2015年)上旬、「資生堂ショック」なる言葉がメディアを賑わせました。女性が長く働き続けられるよう、各種の両立支援制度を整えてきた資生堂が、14年4月から、こうした制度を見直しているというのです。

   具体的には、時短勤務制度を利用している女性社員にも、通常の社員と同じように、「遅番」のシフトや、接客ノルマを課すもの。この「資生堂ショック」、働く女性たちは、どのように受け止めているのでしょうか。

若い人ほど「遅番」シフトに入ることが多い

子育て中です。
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   学生時代、知人男性の彼女(Nさん、23歳)が「美容部員をしている」というので、色々と聞いてみたことがあります。Nさんは、短大を卒業後、関西の百貨店で美容部員をしていました。Nさんと付き合っている男子は、「彼女は土日が基本的にほとんど休みじゃないから、なかなか会えない」と、こぼしていました。各社、状況は少しずつ異なるのですが、開店からの「早番」と、閉店までの「遅番」があるのは、だいたい共通しています。そして、Nさんの職場では、若い人ほど、土日や「遅番」勤務をこなすことが多いようでした。過酷な労働環境に疲れてしまった若手は、20代後半で結婚・出産し、退職・・・というケースも、少なくないようです。

   資生堂は、こうした、現場で働く女性たちの待遇を、どんどん改善させてきた歴史があります。同社のホームページをみると、なんと1990年から、「子どもが満3歳になるまで、第2子を産んだ場合は、通算5年まで取得できる育児休業制度」を導入。以来、妊娠から職場復帰の流れを上司と確認し合えるコミュニケーション体制(チャイルドケアプラン)や、男性の育休取得促進など、毎年のように制度を充実させており、男女がともに働きやすい会社という点では、文句がないように思えます。

   NHKニュースおはよう日本(「『資生堂ショック』改革のねらいとは」2015年11月9日)によると、2007年からは、美容部員たちにも積極的に、時短勤務制度の利用を進めてきたそう。ところが、現場では、時短社員と、子どもを育てていない社員の間で「不公平感」が生まれ、かき入れ時の夕方に、美容部員が足りないというジレンマも起こりました。そこで、時短の人にも、できる限りノルマや土日勤務、遅番をこなしてもらおうというのが、今回の「資生堂ショック」なのですが・・・。筆者が、働くアラサー女性の知人たちに聞いてみたところ、「資生堂ショックなんて、ショックでもなんでもない」という声が、多数派だったのです。

「女性が働きやすいからこその『見直し』では」

   ある大手企業で、全国転勤を視野に入れながら働くE子さん(29歳)は言います。「資生堂はとにかく『女性が働きやすい』イメージ。今回の『ショック』も、女性が働きやすいからこその『見直し』でしょう。うちなんて、まだその段階までも到達していない。この前も、総合職の先輩が、出産と夫の転勤で辞めちゃったし」。

   別の大手企業で働くFさん(31歳)も言います。「うちの会社は、『両立支援体制』が結構整ってる。ただ、産後復帰した女性が、簡単な仕事しかさせてもらえなかったり、結局、管理職には、なれなかったり。そういうのを見てると、資生堂さんも同じように、『女性が働きやすい環境づくり』と『女性の活躍推進』の両立に悩んでたんだ! って思いますね」

   「資生堂ショック」というと、あたかも「女性に負担を強いる」ニュアンスが感じられますが、実際は、そうではないのです。資生堂は、女性にとって、長く働きやすい会社。だからこそ、「時短勤務の女性たちにも、さらにモチベーションを上げてもらおう」という、第2ステージに行っている。これが「ショック」として受け止められているうちは、まだまだ社会全体に、「女性が長く働き続けられる環境づくり」が浸透していない証・・・ではないでしょうか。(北条かや)