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「赤ちゃん、もっと泣いて!」 長距離フライトの難題に米LCC社が挑戦

   親にとって赤ちゃんを連れての旅行は大変だ。長時間、狭い空間で座っていなければならないフライトを強いられると、なおさらだろう。周囲の同乗者にしても、「赤ちゃんは泣くのが仕事」と理解しているつもりでも、いざ隣の席で泣かれたら表情がこわばり、リラックスできなくなることもある。

   このような、親にとっても、周囲の客にとっても難しいシチュエーションをかかえたフライトで、乗客全員を笑顔にするという、一見不可能にも思えるミッションにアメリカの格安航空会社「JetBlue Airways」がチャレンジ。見事に、成功した。

   さて、同社がとった方法とはどのようなものだったのだろうか。

ギャン泣きごとに次のフライトが割引に

赤ちゃんが泣くと、同乗者がにんまり
赤ちゃんが泣くと、同乗者がにんまり

   JetBlue Airwaysは4月、「FlyBabies」と名づけたキャンペーンで果敢に挑戦した。対象としたのは4月15日のニューヨーク発、カリフォルニア州ロングビーチ行きのフライト。飛行時間は約6時間。日本からタイやシンガポール、マレーシアなどへ飛ぶほどの距離に相当する。日本-ヨーロッパ間や北米間のロングフライトと比べると短いものの、赤ちゃんを連れての6時間は十分に長いと感じる距離だろう。

   サービス内容はいたってシンプル。同フライトに搭乗した赤ちゃんが全員に聞こえるほどの「ギャン泣き」をするたびに、同乗者全員が次回JetBlue Airwaysを利用する際、往復フライト代を25%オフにするというもの。「すすり泣き」ではカウントされないそうだが、赤ちゃんがしっかり4回泣くと往復チケットが無料でゲットできることになる。偶然乗り合わせた人にとってはなんとも嬉しい企画ではないか。これなら赤ちゃんが周囲を憚らず大泣きすることに眉をひそめる人も、笑顔になるに違いない。

母の日に合わせキャンペーン展開

   キャンペーンの様子は、同社が5月2日からYoutubeで公開している動画に収められている。冒頭、母親たちがそれぞれ赤ちゃんを連れての旅行で感じる不安について話すシーンから始まり、彼女たちが機内に乗り込む場面では、他の乗客が不安げに母子を眺めている表情が映し出される。

   着席した乗客たちは、離陸直前のアナウンスでこのキャンペーンについて知ることになる。1回泣くと25%オフ、4回でただ。アナウンスを聞いた人びとは大喜びし、一瞬にして機内の雰囲気も人びとの表情も明るくなった。赤ちゃんの近くに座っている人は、温かいまなざしに。泣きわめくと拍手さえも沸き起こるほどの歓迎ぶりだ。

   赤ちゃんたちが搭乗者全員に無料の往復フライトをもたらしたのは、到着まで残すところ約1時間となったころ。フライトアテンダントが「Now you did it!(やりましたね!)」とアナウンスした。

   このキャンペーンは5月8日の母の日に合わせ実施された。母親たちがどのような気持ちでロングフライト便に搭乗しているか、少しでもまわりの同乗者に理解してもらえれば、という思いが込められている。

   動画は「Next time, smile at a baby for crying out loud(次に大泣きしている赤ちゃんがいたら笑顔でいてほしい)」というメッセージで締めくくられている。(執筆:中井千尋 編集:岡徳之)