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職場の仲間は「チームメイト」「イケメン」パラアーチェリー、上山選手の素顔

   2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで、あと500日。いよいよ、これから選手たちが代表選考という「関門」に挑む一方で、晴れの大舞台でのトップアスリートたちの活躍を、いまから楽しみにしている人は多い。

   そんな注目のアスリートの一人に、三菱電機に所属するパラアーチェリーの上山友裕(うえやま・ともひろ)選手がいる。その腕前は「国内最強」。来るTOKYO2020で、金メダルの獲得に大きな期待がかかっている。さらには、さわやかなルックスと屈託のない笑顔が魅力の「イケメン」アスリートとして、女性ファンが急増している。その素顔に迫る。

  • 「パラアーチェリーを多くの人に見に行てほしい」(写真は、上山友裕選手)
    「パラアーチェリーを多くの人に見に行てほしい」(写真は、上山友裕選手)
  • 「パラアーチェリーを多くの人に見に行てほしい」(写真は、上山友裕選手)

大会前に必ず食べる「たこやき」が大好物

   競技中の上山友裕選手はとても凛々しく、的を真剣に見つめる横顔は、なるほど「イケメン」だ。海外の人気も高く、タイでの試合では、上山選手の前に女性ファンが列をなしたことがあるほど。

「正直、イケメンというのは、自分のキャラクターではないので。もちろん、周りからそう言われることはうれしいですし、ありがたいことですけど......」

と、少々戸惑いぎみではあるものの、

「自分は学生時代からずっと三枚目キャラ。『イケメンですね』って、言われてもなんて返したらいいかわからなくて。最近は、『ホンマありがとう。でも、そんな褒めてくれても、サインは1枚までやで』って、ボケながら返すようにしています」

   そう言って、笑う。

   そんな上山選手には、競技中の凛々しい雰囲気からは想像しづらい、可愛らしい一面がある。

「じつは、ライオン・キングが好きなんです」

   なかでも「シンバ」(子どものライオン)がお気に入りだそうで、部屋にはキャラクターの大きなぬいぐるみが置いてあるとのこと。また、競技で使う矢入れには、ライオン・キングのピンバッジがついていて、前回のアジア大会をはじめ、大会時にはお守りのように持ち歩いているそうだ。

   生まれも育ちも、大阪は東大阪市の出身。試合前の「勝負メシ」は「たこ焼き!」と即答するほどで、「たこ焼きは、まさにソウルフード。伊丹空港ではたこ焼きが売っているので、海外の試合の前に食べていきます」と話す。

   海外遠征にはレトルトカレーを持って行くようにしている。「便利ですし、海外の食事は口にあわないこともありますから。その点、2020年は東京大会なので、好きなものが食べられてうれしいです。たこ焼きも食べられますしね」。

アーチェリーをはじめたきっかけは、美人の先輩

   上山選手とアーチェリーの出会いは、大学時代。友人に誘われて訪れた体験入部で、美人の先輩に声をかけられ、舞い上がった。言われるがままに弓を握り、わずか5メートル先の的に当てたのが人生で最初に放った矢である。「上山くん、センスある!」とおだてられ、そのまま入部にしたという。

「もともとボクがアーチェリーを始めたきっかけが美人の先輩の存在だったのですから、スポーツを見に来てくれるきっかけって、なんでもいいのかもれません。ひいきの選手を見つければ、スポーツ観戦は劇的におもしろくなるはず。ボクに興味を持ってくれた人が応援に来てくれれば、自分自身にとっても大きなパワーになると思いますから」
アーチェリーをはじめたきっかけは美人の先輩だった。
アーチェリーをはじめたきっかけは美人の先輩だった。

   じつは上山選手には、TOKYO2020の金メダル以外の目標がある。

「会場を観客で満員にしたいんです。日本の方々の声援なしに、金メダルを獲得できるとは思えない。そのために、もっとアーチェリーファンを増やしたいし、アーチェリーを見てくれる人が増えることがボクにとって一番うれしいことなんです」

   そのためにも、TOKYO2020を見据えて、連日、万全の体制でトレーニングに励んでいる。平均して5時間から8時間。1日に放たれる矢の数は、200~300本にものぼる。弦を引きしぼる右手はマメで覆われている。

   「世界に勝つためには練習量を増やすしかありません」。以前のサラリーマン時代は週2回、仕事の合間に練習するのがやっとだったが、2014年に三菱電機のアスリート社員になってからは、サポート体制にも恵まれ、思う存分アーチェリーに打ち込めている。

一本の矢が的の真ん中に当たったときの快感をいっしょに

   上山選手は、三菱電機の一員であることで「多くの同僚と一緒に戦っている」と感じる。プロは孤独な印象があるが、企業に所属すると会社の仲間が支えてくれる。「アーチェリーは個人競技ですが、一つのチームであると感じることができることがうれしい」。

   さらに、三菱電機には他の競技のトップアスリートも所属しており、相談やアドバイスしあえる環境も大きな力となる。

   日本で、アーチェリーはまだまだマイナー競技だ。国内大会では観客が一人もいないこともあるという。「息を吸うのも忘れるくらいに張りつめた緊張のなか、満を持して放たれる一本の矢が、的の真ん中に当たったときの気持ちよさは、選手だけじゃなくて観客も味わえるはずです。静寂が突如として大きな歓声に包まれる。あの興奮を会場でぜひ、体験してほしい」。

   上山選手は、一人でも多くの人が、夢の島公園アーチェリー場(TOKYO2020・アーチェリー競技開催場)に見に来てくれることを望んでいる。