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野村が国際投資銀行部門を強化 -メガバンク、外資に真っ向勝負-

野村ホールディングスの本社
野村ホールディングスの本社
 

   日本有数の金融グループ、野村ホールディングスが、企業の資本調達手段の多様化やグローバル化に対応するため、グローバル・ホールセール(法人取引)部門の機能強化に着手、2004年春に目玉となる新組織を創設した。目的は、東京に進出した米系有力証券や日本のメガバンクグループに対抗する国際投資銀行としての地位向上である。

   インベストメント・バンキング(投資銀行)部門のなかにキャピタル・マーケット部を新設し、商品開発力をアップさせた。メガバンクは本体と系列証券の連合で強みを発揮しているが、こうした株式(エクイティ)と債券(デット)の引受統合を狙った。
   これにより、顧客の財務リストラにトータルなアドバイスを提供する能力が向上する。また、米系外資や銀行系証券が得意とするデリバティブ分野のトレーディング体制や国内クレジット市場に対する取り組み、アセット・ファイナンス(担保融資)といった銀行型モデルに近い機能を強化するグローバル・マーケッツのユニット創設を行った。このユニットはエクイティ以外にシンジケート(協調融資)やフィックスト・インカム(債券運用)を統括する。

多様な財務リストラに応える

   グローバル・ホールセール全般の機能強化は、メガバンク傘下にも属さない野村が、日本のメガバンクグループに真っ向勝負を挑んだことも意味する。 野村がこうした判断をした背景には、企業へのメインバンクの威光が弱くなり、案件獲得が自由競争になったことで、エクイティファイナンス以外の資本調達や、多様な財務リストラ等のニーズに応えるチャンスが広がったことにある。

野村ホールディングスのオフィス
野村ホールディングスのオフィス

   野村ホールディングスの最高幹部の1人、戸田博史COOは、「米国の投資銀行が90年代に一気に伸びた要因は株価の上昇だ。野村もグローバルに戦いたいが、それには母国市場を強くすることが先決だ。私どもには世界一の金融資産がある日本におけるリテールネットワークという強みがあるから、日本の景気がテイクオフし、株価が上がれば、グローバルな競争力を持った金融機関になるという夢の実現がみえてくる。その手段の一つとして、外資を買収する可能性は否定しない」と展望を語る。

傷ついたブランドイメージが回復

東証株式第一部 株式売買高

   2004年3月期は銀行や郵貯の預貯金残高が伸び悩む一方で、野村證券の預かり資産は株式時価の評価増も手伝って63.8兆円と、前年同期比15.3兆円(32%)純増した。
   証券制度の変更に機敏に反応し、顧客にきめ細かい情報提供サービスを展開した成果である。野村といえば、90年代後半の2度にわたる不祥事で企業統治が機能不全となり、顧客離れを起こした苦い経験がある。これを教訓に徹底的なコンプライアンス重視の経営を行い、傷ついたブランドイメージは回復してきた。有力顧客が野村に再び信頼を寄せつつあることが、国際投資銀行を目指す野村の自信につながっている。