J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

保険業界

現状

急速に進む損保会社の統合

保険会社のパンフレット
保険会社のパンフレット
 

   生命保険各社は危機的な状況は脱しつつあるものの、2004年3月期決算でも大手9社の個人向け保険の保有計契約高は全体で前年同期比5.6%減と、7年連続の落ち込みを記録し、「生保離れ」が続いている。他方、損害保険各社は株価の上昇で、04年3月期決算では大手9社・グループすべてが黒字となったが、保険料収入は微減で、市場全体の頭打ち傾向に頭を痛めている。

   生命保険業界と損害保険業界も、他の金融業界と同様に、金融自由化の埒外にはなかった。この10年、保険会社の統廃合は急速に進んだ。特に損害保険業界の統廃合は目立った。最大手の東京海上火災は日動火災と2002年4月に持ち株会社ミレアホールディングスを設立し、その傘下で経営を統合した。両社の子会社の東京海上あんしん生命と日動生命もその後、ミレア・グループ入りした(その後、合併し東京海上日動あんしん生命に)。東京海上火災と日動火災は2004年10月に合併して東京海上日動火災が誕生した。
   また安田火災海上と日産火災海上が合併し損保ジャパンを設立、大成火災が加わり業界第2位の地位を確保した。財閥系の三井海上火災と住友海上火災が合併して業界第3位の三井住友海上火災が誕生している。

遅れる生保業界の再編

   損保業界の急速な統廃合と比べると、生保業界の再編は大きく遅れている。その理由は、損保会社は株式会社であるのに対して、多くの生保会社は相互会社であるためだ。そうした中でも業界再編は進んでおり、業界大手の明治生命と安田生命が合併して2004年に明治安田生命が誕生。大同生命太陽生命T&Dファイナンシャルの3社は持ち株会社を設立し、経営統合を計画している。生保再編のもう1つの特徴は、破綻した生保会社が外資系の傘下に入って再建を図っているケースが多いことだ。

保険種類別の契約高

   例えば、1997年に破綻した日産生命の既存契約の管理業務を引き継いだあおば生命は、99年にフランスの投資会社アルテミス・グループが買収。さらに2004年11月に米国系のプルデンシャル生命に再買収され、近く合併する。また、千代田生命はアメリカのAIGが買収している。

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
消費者の生命保険離れに歯止めかかるか

日本国内における地震保険世帯加入率の推移

   日本では個人の資産は銀行預金と生命保険で運用されてきた。特に生命保険の予定利率が相対的に魅力的であったことから、日本では過剰保険加入という状況がみられた。しかし、バブル破裂後、消費者の生命保険離れが急速に進んでいる。新規契約が伸び悩んでいることに加え、既存の保険の解約が増えている。その最大の理由は、資産運用の悪化で生保会社が予定利率を確保できなくなり、経営破綻する会社が出てきたことだ。相次ぐ破綻で消費者の生保会社に対する不信が高まっている。政府は2003年に破綻前に予定利率引下げができるよう保険業法を改正した。しかし大量の解約を恐れて予定利率を下げた生保はまだ出ていない。消費者の生保離れに歯止めをどうかけるかが、生保業界の最大の課題となっている。

ポイント2
外資系生保のシェアは今後も高まる

   今後は、外資系生命保険会社のシェアが確実に高まっていくと予想される。生命保険の分野では、破綻した日本の生保会社が外資系の傘下に入っている。外資系としては、アリコジャパンが業界6位、アメリカンファミリー生命が8位を占めるなど、日本市場で確実に地歩を築いている。外資系生保の成功は日本の生保会社が「生保レディ」と呼ばれる大量の販売スタッフを使って営業を行うのに対して、通信などを使った効率的な営業手法が奏功しているからである。今後も、外資系生保のシェアは確実に上昇していくと思われる。

ポイント3
高齢化関連の「第3分野」伸ばせるか

保険種目別正味収入保険料 2003年度

    今後期待される新しい分野に「第3分野」と呼ばれる市場がある。従来のような生命保険、自動車保険の市場の拡大には限度があることは明白である。その中で、医療保険や介護保険関連商品が注目されている。特に高齢化が急速に進むと予想されることから、公的な医療保険や介護保険を補完する民間の商品の登場が期待されている。2004年10月に最大手の東京海上日動火災が医療保険分野への進出しており、これで三井住友海上、損保ジャパンと大手3社がいずれも「第三分野」へ進出したことになる。