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流通

現状

百貨店は構造不況業種になった

三越本店
三越本店

  百貨店業界の2003年の売り上げ総額は、7年連続の前年割れとなった。長く続いた売り上げの不振は、まさに百貨店業界が構造不況の1つであることを象徴している。
&2003年は、そごう西武百貨店が持ち株会社の下で経営統合を果たし、ミレニアム・リテイリング・グループが誕生したが、西武百貨店はいまでも再建途上にあることに変わりはない。

  大手の百貨店が、苦戦する地方の百貨店の支援に乗り出す事例も増えている。伊勢丹は、九州・福岡県の岩田屋井筒屋の支援を進めている。さらに三越うすい百貨店(福島県郡山市)、高島屋さくら野百貨店(仙台市)を支援している。百貨店の再生のためには、お客に支持される特色のある店作りが欠かせない。
 伊勢丹が、東京・新宿にある本店に昨年9月にリニューアル・オープンしたメンズ館などは、そうした魅力ある店作りへのチャレンジとして高く評価されている。2004年秋には三越が東京・日本橋で創業100周年を記念して本店新館をオープンさせ、集客、売り上げとも前年同期比で大幅な増加を達成している。こうした新店効果の成否が、事業再編とともに百貨店再生のカギを握る。

総合小売りでも合併、提携など再編の動き

  総合小売業界も、再編の嵐が吹き荒れている。
  イオンは、支援先のマイカルを子会社化したことで、2004年度のグループ売上高が初めて4兆円の大台に乗せる見通しだ。売り上げ規模の面で、最大のライバルであるイトーヨーカ堂を抜き去るのは確実となった。イオンはデフレ、消費不況にもかかわらず、スーパーのほか、ホームセンター、ドラッグストアなど小売全般へ勢力拡大を目指すなど、積極的な戦略が目を惹く。
特にホームセンターへの出資は、「スーパーセンター」と呼ばれる新業態の店を増やすためだ。このスーパーセンターは、ホームセンターと食品スーパーを融合した平屋建ての大規模店。地方都市など小商圏におけるワンストップショッピングを可能にする店舗として注目されている。イオンはホームセンターへの積極的な出資で、そのノウハウをこれからの店舗作りに導入する考えだ。
一方のイトーヨーカ堂は、提携や買収による勢力拡大には従来から慎重だ。いまでもその姿勢に大きな変化はない。当面の戦略は既存店の競争力向上が軸になるが、最近では進展数の拡大や店舗面積の大型化には意欲を持ち始めている。2003年には、奈良そごうの跡地へ出展した。「もはやスーパー、百貨店といった業態はこだわらない」というイトーヨーカ堂の姿勢は、イオンとも通じるものがある。

英国最大手のテスコが中規模クラスのスーパーに食指を動かす

  かつての総合小売りのトップ企業だったダイエーは、フランスのカルフールとの提携や、グループ会社の食品スーパー、マルエツとの合併が取りざたされたが、結局は産業再生機構の下で、再建の道を探ることになった。

  食品スーパーでは、拡大路線の総合食品スーパーであるイオンや流通外資に飲み込まれるか、それとも食品スーパー同士が手を組み、難局を逃れるか。今後は、この二者択一を迫られるスーパーが増えることになろう。
2003年、イオンは茨城県地盤のカスミへの出資に成功した。首都圏食品スーパーへの足がかりを得た。北海道のポスフールもついに傘下入りした。
  一方、外資ではウォルマート・ストアーズが総合スーパー、西友の再建に手間取っている。その間隙を縫って、中規模クラスのスーパーに食指を動かしているのが英国最大手のテスコだ。昨年、首都圏地盤のシートゥーネットワーク(C2)買収で、日本進出を始めたばかりである。C2の店舗を首都圏・小型店の実験台にする一方で、現在も全国各地のスーパーに提携を打診しているもようだ。

コンビニエンスストアでは中堅チェーンの再編が起こる

  再編が一段落したように見えたコンビニエンスストア業界だが、長引く消費不況の影響で、中堅チェーンを軸にした再編の第2幕が上がる可能性も出てきた。
セブン-イレブン・ジャパンの首位は揺るがず、三菱商事傘下のローソンは「脱セブンモデル」を合言葉に、「足りないものは補う」という戦略を追求している。
  「セブンモデル」とは、仮説・検証・仮説・・・・の反復でお客のニーズを徹底的に取り込み、その結果、天候や気温の変化、住宅地かオフィス街か、お昼時か、それ以外か、午前中か夕刻かなど細かい条件に合わせて、棚に陳列する商品の内容や配置まで考える商法だ。このセブン・イレブンのきめ細かい戦術に対抗しても勝ち目はないので、他の土俵で勝負しようとしているのだ。
 ローソンは郵政公社東京メトロ(旧・営団地下鉄)、銀行など異業種・異業態と手を結ぶ。伊藤忠商事系のファミリーマートも異業種連携や「ニューマーケット」と呼ばれる特殊な立地開拓に余念がない。先発のローソンに次いで、中国に出店するなどアジア進出も加速している。
 上位チェーンが親会社との連携強化で総合力を引き上げていくのに対して、下位はこれから再編の波をかぶる可能性もある。2004年秋にはユニー傘下のサークルKとサンクスが合併したが、住友商事との提携説も依然くすぶり続けている。業績停滞のスリーエフ、三菱商事系への仕入れ一本化に動くポプラにも再編の噂がたえない。

歴史

バブル崩壊や消費の冷え込みで売り上げ減少が続く

  創業の歴史をさかのぼれば江戸時代にたどり着くのが、日本の多くの老舗百貨店だ。そのため長い間、日本の流通小売業に君臨してきた。近年はスーパー、ディスカウントストア、通販など様々な流通業態の登場により、その存在が大きく脅かされている。
 現在の連結売り上げ高ランキングでは、第1位が高島屋、第2位が三越、第3位が大丸、第4位が伊勢丹、第5位が西武百貨店、第6位が丸井、第7位が東急百貨店、第8位が松坂屋の順となっている。

  百貨店業界は80年代後半から大都市に大型店の出店が相次ぎ、顧客の争奪戦が繰り広げられた。バブル経済崩壊や長引く消費の冷え込みが追い討ちとなり、百貨店業界も売り上げの減少が続いている。
 2000年に全店舗が赤字になった名古屋の名門・松坂屋や、海外店を次々に閉めた大丸、新館を閉鎖した福岡の岩田屋、閉店になった福岡玉屋など、百貨店の不況は全国に及んだ。三越は1000人以上の人員リストラを断行。2000年7月にはグループ全体で1兆8700億円の負債を抱えていた「そごう」がついに経営破綻に追い込まれた。
 百貨店業界は「すでに過去の業態」との厳しい指摘も聞かれるが、今後とも大型再編、淘汰は不可避の情勢となっている。

日本の大スーパーは小売りから複合企業へと巨大化

イトーヨーカドーの店舗
イトーヨーカドーの店舗

  日本で初めてセルフサービス、薄利多売を掲げたスーパーが登場したのは、1957年のことである。もっともスーパーという言葉は食品を中心としたローカルチェーン展開の企業を指すことが多いが、日本のスーパーの代表とされるダイエーやイトーヨーカ堂、イオンは、百貨店並みに品揃えが豊富なことから「GMS」(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア)、あるいは「ビッグストア」と呼ばれている。
 日本のGMSは本業の小売り以外にも、レストラン、ファストフード、ホテル、レジャー、ノンバンク、航空、物流など幅広く手を広げ、複合小売業から複合企業へと巨大化を遂げたところが多い。また大手GMSは、地方スーパーを傘下に収める一方で、ダイエーがローソン、イトーヨーカ堂がセブン-イレブン・ジャパン、西友がファミリーマートなど、大都市単身生活者を主要な対象にした24時間営業のコンビニエンスストアを展開し、大きく発展させてきた。
しかしディスカウント店や「100円ショップ」、安売りドラッグストア、「ユニクロ」(ファーストリテイリング)など新興勢力の台頭で、スーパーやコンビニも安閑とはしておれなくなった。
 特にスーパーは最大手のダイエー、当時はセゾン系の西友(現在は米ウォルマート・ストアーズ傘下)、関西が地盤のマイカルなどが過大投資や過大借金などの影響で経営危機に陥り、2000年2月には長崎屋が経営破たんに陥った。コンビニでもファミリーマートが伊藤忠商事に、ローソンは三菱商事に、ダイエー系列で中堅の食品スーパーのマルエツは丸紅にと売却が相次いだ。

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
ダイエーは生き残れるか

  産業再生機構の下で再建を進められているダイエーの行方次第では、業界の地図がさらに大きく変わる可能性がある。ダイエー再建のために再生機構が2004年11月8日までに公募していたスポンサー企業には当初、イトーヨーカ堂やイオン、大手商社の三井物産、丸紅、住友商事など50社程度が名前を連ねた。
  産業再生機構は05年1月、ダイエーの経営再建を支援するスポンサーを選ぶ2次入札で、スポンサー候補を同業のイオン、総合商社の丸紅、投資ファンドのキアコン(東京)をそれぞれ中心とする3グループとすることを決定した。3グループは今後、ダイエーの事業再生計画案をまとめ、2月下旬の3次入札に参加する。3月上旬には最終的なスポンサーが決定。ダイエーは3月下旬に臨時株主総会を開き、スポンサーなどから役員を迎え入れ、新経営体制を発足させる。再生機構はダイエーに33・4%出資し、支援企業とともに再生を進めていく。

「広告の品はレジにて半額」のポスターが並ぶイトーヨーカドーの冷凍品売り場
「広告の品はレジにて半額」のポスターが並ぶイトーヨーカドーの冷凍品売り場

  しかし、ダイエーのスポンサー企業の決定は、大手スーパー業界にとって次なる再編劇の始まりを意味することは間違いない。
当初有力とされたイトーヨーカ堂のほか、外資の米流通大手ウォルマート・ストアーズ、米投資ファンドのリップルウッド・ホールディングス、米穀物大手カーギルを中心とするグループは残れなかった。2次入札には7つの企業グループが応札。このうちイオンは京セラと組み、マイカルなどの再生を手掛けた実績をアピールした。丸紅は当初、リップルウッドなどと連合していたが、2次入札から日系ファンドに連合相手を変更。食品などに重点化して再建を目指す再生機構の基本方針に沿って支援する姿勢を強調した。キアコンは伊藤忠商事と一緒に応募。
  再生機構は、263ある既存店舗のうち、総合店を中心に53店舗を閉鎖・売却する方針。一方、食品スーパーを5年で100程度出店する考えで、食品のノウハウを持つかどうかが支援企業選びの鍵となっている。

ポイント2
攻勢かけるディスカウント店とどう共生するか

  流通業界の再編の追い風になってきたのが、ディスカウントストアや専門小売店の躍進だ。 多店舗化を図り、大量仕入れを進め、大量販売で規模の経済を追求する。しかも、即金決済、POSの導入で売れ筋商品情報を即時に収集する。こうした手法で、売り上げを大きく伸ばしてきたのが、コジマヤマダ電機、100円ショップのダイソーに代表されるディスカウントストアである。
 またカジュアルウエアのユニクロ(正式な社名はファーストリテイリング)は、日本にはなかったビジネスモデルで成功を収め、大手スーパーの衣料品販売のシェアを侵食してきた。低価格ながら高品質、企画から製造、販売まで一貫して手がける新業態だ。ユニクロは年間販売点数2億点のうち、約9割が中国からの輸入と言われ、2000年秋には国内の繊維団体がセーフガード(緊急輸入制限措置)を政府に発動する一幕も見られた。
 「ユニクロ」のファーストリテイリング、医薬品のマツモトキヨシ、総合ディスカウントストアのドン・キホーテ、玩具の日本トイザらス、100円ショップのダイソーは、時代のニーズを先取りした新・流通革命のさきがけとも言われている。 百貨店や大手スーパーの再生のカギは、こうした新・流通革命の旗手たちとどのような共生関係を築き上げることができるかにかかっている。

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ポイント3
外資は救世主になれるのか

  英国のテスコ、米のウォルマート、ドイツのメトログループなど、海外の巨大小売店が日本市場への本格的な上陸を狙っている。たとえば、西友はウォルマートの支援により経営変身中だ。一時期は日本の流通業界はイトーヨーカ堂vsイオンvsウォルマート・西友連合の3強時代になると言われたこともあったが、ウォルマートによる西友の再建は必ずしもうまくいっていないという観測もある。外資がどのような次の一手を打ち出すのか。業界の再編を展望する上では、見逃すことのできないポイントだ。