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NTT「光回線構想」に仕掛けられた “ソフトバンク潰し”

 NTTが11月、中間決算に合わせて発表す る新たな中期経営計画が注目を集めている。 NTTは1年前、2010年までに5兆円を 投じ、3000万回線の光ファイバー網を敷 設する構想を明らかにしており、今回の新中 計はそのロードマップに当たる。しかし、同 時にADSL(非対称デジタル加入者線)サー ビス最大手、ソフトバンク“潰し” とも観測されている。

メタル回線が大幅廃止

  「ソフトバンクの株価は下がるかもしれない」。 NTTの新中計をにらみ、市場関係者の一部ではこんな声が上がっている。3000万回線は既存の固定電話網の半分に当たる。それだけの光ファイバー網を敷設するということは、同量のメタル回線が廃止されることにほかならない。ソフトバンクのADSLは NTT東西のメタルへ接続している。それが半分になれば、ADSLサービスの提供に支障がでるのは間違いない。
ソフトバンクがADSLサービスに参入したのは01年8月。街頭でモデムを無料配布する販促活動を展開し、わずか4年で加入者500万件と、NTT東西をしのぐ最大手に躍り出た。が、両社の「接続協定約款」にはこう書かれている。
  「接続を中止する場合、当社はメタル回線設備の撤去開始の原則4年前までに、その情報を協定事業者へ提供する」NTTが3000万回線の光ファイバー網を敷設し終わるのは5年後の2010年。“4年前の通告”はその計画にピタリ符号する。新中計にメタル回線の廃止スケジュールが盛り込まれる可能性は高く、その場合、ソフトバンクのADSLサービスはあと5年の寿命となる。

ソフトバンクの株含み益まで目減りか?

  それだけではない。新中計は、ソフトバンクの孫正義(そん・まさよし)社長が標榜してきた「時価総額経営」に転機をもたらすかも知れない。ソフトバンクの株価下落が “虎の子”のヤフー株に連動すれば、2兆円を超える保有上場株式の含み益まで目減りする。その打撃は、孫社長の悲願である携帯電話参入に直結するのだ。
  キャッシュ不足のソフトバンクは、300 0億円といわれる無線基地局の投資に当たり、「ベンダーファイナンス」と呼ばれる資金調達手法に着目した。通信機器メーカーから融資を募って無線基地局を整備し、その代金は携帯電話事業の将来の利益で支払うのである。いわば“利益先喰い”の奇手だが、それでも、通信機器メーカーが同社に売り込みを掛けるのは、含み益2兆円の信用があるからにほかならない。br /> その前提が崩れたら、「孫さんは携帯電話に参入できても、サービス展開が遅れ、十分な加入者を獲得できない怖れがある」と、市場関係者はみている。NTT東西の光ファイバー網投資が、めぐりめぐって携帯電話のNTTドコモを助ける形になっている。