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富士重の独自技術 ―トヨタは「消化」できるのか―

トヨタが資本参加した富士重が誇る「水平対向エンジン」
トヨタが資本参加した富士重が誇る「水平対向エンジン」
 

  国内中堅自動車メーカーの富士重工業が、米ゼネラルモーターズ(GM)との資本・業務提携を解消し、新たにトヨタ自動車の出資を受け入れることになった。 富士重の企業価値は「技術力の高さと独創性にある」(業界筋)とされ、それをトヨタがどう使いこなすかが注目されている。
  GMが保有富士重株のうち、発行済み株式数の8.7%に当る6800万株を354億円でトヨタに譲渡。残る11.7%分の保有株は市場で売却して富士重がこれを買い入れる。GMの傘下から事実上、トヨタグループに「籍」を移し、その信用力の下で生き残りを模索する格好だ。

GMとの協業の成果は上がらず

  富士重は1999年12月にGMと資本提携した。それまで筆頭株主だった日産自動車仏ルノーの傘下に入り、資産リストラの一環として保有富士重株の売却方針を打ち出したことがきっかけだ。しかし、GMとの協業の成果は上がらず、当初期待された小型車共同開発などのプロジェクトもほとんど進展しないままに推移していた。
  前身は「中島飛行機」と呼ばれた航空機メーカー。国内では旧日本陸軍の一式戦闘機「隼」や、同海軍の迎撃戦闘機「紫電改」のエンジンを開発したことで知られる。トヨタ、日産がまだ海外メーカーからの技術導入に車づくりを依存していた1950年代でも、富士重だけは全くの独自技術で乗用車開発を行えるだけの実力を持っていた。現行車種に搭載されているエンジンも、世界では富士重と独ポルシェしか採用していない「水平対向エンジン」だ。

技術の高さや独自性が逆に隘路に

  だが、GMとの提携劇ではこうした技術の高さや独自性が「逆に隘路になった」(関係者)とされている。水平対向エンジンは、現在の主流であるV型エンジンや直列エンジンに比べて走行性能が優れているものの、「つくりにくく、直しにくい」(日産首脳)エンジン。そのうえ設計仕様なども異なるため、部品やプラットフォーム(車台)の共通化といったコラボレーションの余地が限られるからだ。
  こうした隘路は無論、提携相手がトヨタに代わったとしても解消されるわけではない。トヨタがGM保有株をすべて引き取らず、8.7%という微妙な出資比率にとどめたのも、市場では「提携効果に対する不安と疑念を捨て切れなかったため」との見方が有力だ。
  富士重とトヨタでは今後、両社で設置した提携検討委員会を通じて具体的な協業内容を詰めていく方針。1)富士重の米国工場へのトヨタ車生産委託 2)トヨタの先進的環境技術の富士重への供与――などが当面のテーマに挙がるが、その関係がどこまで発展していくのか、先行きは不透明だ。