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ポッドキャスティングは定着するか

   インターネットを利用して音声を配信するポッドキャスティングが日本でもポピュラーな存在となってきた。05年になって利用者も急増、広告媒体としても注目され、ラジオ局も一斉に飛びついた。ポッドキャスティングは日本に定着するだろうか。

   ポッドキャスティングは米国のアップル社のデジタル携帯音楽プレーヤーであるiPodと放送(ブロードキャスティング)を組み合わせた造語。インターネットでラジオなど音声番組を配信する仕組み。利用者は「録音」してiPodなど携帯音楽プレーヤーで聴く。
   米国で1年前に誕生、いまでは既存のラジオ局のほか、一般の個人が開設、700万人以上が利用する。コンテンツの数も1万5千件以上になり、週に千件づつ増えている。米国の調査会社では、2010年には米国の全世帯の11%が利用すると予測している。

FMラジオ局はアーティストの未公開トークを配信

ポッドキャスティングは、iPodと放送(broadcasting)とを組み合わせた造語だ(05年10月6日、ラオックス本店にて)
ポッドキャスティングは、iPodと放送(broadcasting)とを組み合わせた造語だ(05年10月6日、ラオックス本店にて)

   日本では、AMラジオ局のニッポン放送文化放送が05年秋からポッドキャスティングをスタートさせた。ニッポン放送は「ポッドキャスティングステーション」というサイトを作って8番組、文化放送もアジアのエンタテインメント情報など7番組を配信している。
   大阪のABCラジオは米国のビジネスマンの間で小説やビジネス書を音声化したオーディオブックをiPodに"録音"して聴くのが流行しているのに目をつけた。10月からラジオドラマをレギュラー番組として復活させ、ラジオで放送、ポッドキャスティングで配信する。
   FMラジオ局のJ-WAVEは坂本龍一、佐野元春といった大物アーティストの番組の配信を開始した。ラジオ番組で収まりきれなかった両氏の未公開トークなどを配信する。同社では2006年に早い時期にポッドキャスティングに広告を導入して広告媒体に育てたいとしている。
   ラジオ局が一斉にポッドキャスティングを手掛けるのはJ-WAVEのように新たな広告媒体としての期待がある。電通のまとめた「2004年の国内広告費」調査で、ラジオ広告はインターネット広告に抜かれて5位になった。ちなみに1位はテレビ、2位新聞、3位雑誌だった。

権利者から許諾を得られるかが課題

   各ラジオ局はポッドキャスティングへの参入で広告収入アップ狙っている。しかし、課金方法をめぐって、ダウンロードの件数に応じて追加の広告料金を取るか、事前の契約で広告料を上積みするか、はまだ検討中だという。
   ポッドキャスティングを開設するのはラジオ局ばかりではない。アニメーションなどを手掛けるバンダイビジュアルは自社制作アニメに関連したラジオ番組を配信する。アニメをテレビで放送する前にポッドキャスティングで配信して話題を広め、アニメの視聴率をアップさせるのがねらいだという。
   夢いっぱいのポッドキャスティングだが課題も残る。ポッドキャスティングはパソコンや携帯音楽プレーヤーに保存できるため権利者から許諾を取るのに手間がかかる。乗り越えなければならない問題はあるが、新しいメディアとしての可能性は大きいものがありそうだ。