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大型店規制強化どうしてなのか

   大型店の出店を抑制する「街づくり三法」が改正され、大型店の郊外進出が難しくなる。日本の流通行政の大きな転換点だ。規制緩和を声高に唱える小泉内閣でが、あえて改正に踏み切る背景には何があるのか。

大型店は、これからどこに向かうのだろうか
大型店は、これからどこに向かうのだろうか

   大型店出店を抑制し、中心市街地の活性化を進める「まちづくり三法」のうち、都市計画法と中心市街地活性化法が、2006年の国会で改正される。2007年度にも施行される見通しだ。
   改正によって、10,000平方メートルを超える大型店、映画館、アミューズメント施設、展示場などの出店規制が厳しくなる。これまで大型店の郊外出店は、原則自由にできた。大型店出店を抑制して、逆に中心市街地での開発を誘発したい、というわけだ。
   日本の流通行政は90年代半ばの日米構造協議をきっかけに、規制緩和が続いてきた。郊外SCを出店の核とする総合スーパー最大手のイオンの岡田元也社長は「日本の流通は暗黒時代に入る。規制が行きすぎれば(財産の自由を害し)憲法違反の可能性もある」と息巻く。発言の背景には、出店規制の強い時代に日本の流通業が競争力を失ったという思いがある。

自民、公明の圧勝で大勢は決まった

   05年末には、産業界からも否定的な見方が出ていた。日本のSCは工場跡地に多く出店する。海外生産の動きを加速させる中、工場跡地の受け皿を失うことは、日本の製造業にとってもマイナスだったからだ。
   ただ、05年9月の総選挙で市街地活性化を公約に掲げる自民党公明党が圧勝したことで、大勢は決まっていた。流通業界も、市街地に立地する百貨店業界は逆に賛成に回るなど、一枚岩ではなかった。結局、三法のうち大型店出店を環境面から規制する大店立地法の改正を見送り、政治決着した。 この10年の規制緩和で、こと商業分野に関しては、日本は先進国で最も規制の緩い国になったと言っていい。小泉内閣の「民間に任せられるものは民間に」という旗印のもと、日本では急速に規制緩和が進んだ。しかし最近では副作用も目に付く。

行政機関や病院も郊外へ移転する

   80年代半ばから、日本では中心市街地の疲弊が続いている。閉店が目立つ「シャッター通り」となる商店街が増え、行政機関や病院といった都市のインフラ機能も郊外へ移転してしまった。一方、郊外では次々と大型のショッピングセンター(SC)が出現。人工的で、クローズドな「街」が次々と生まれてきた。特に地方でその傾向が顕著だ。
   欧米でも大型店出店は大きな社会問題になっている。米国では州ごとに厳しいゾーニング規制がある。英国でも条例によって実質的に大型店の出店は厳しく規制されている。
   「郊外化」が進めば、都市機能の無秩序な膨張を招き、道路や上下水道など新たなインフラ投資が必要になる。その一方で日本は、世界に先駆けて人口減少社会を迎える。社会構造の大変革に対応するには、市場原理だけでいいのか、という指摘が次第に重みを増している。