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アイフルと銀行
取引「自粛」のウソ

   悪質な取り立てをして業務停止命令を受けた消費者金融大手のアイフルとの取引を「自粛」する金融機関が増えている。ただ、提携ローン商品のPRはしないが、販売そのものはしていて、消費者から申し込みがあれば応じるという、インチキな中身だ。提携解消しないのは、ほとぼりが冷めるのを待っているからだ。

アイフルと金融機関の関係は切れない
アイフルと金融機関の関係は切れない

   アイフルと事業性融資や個人ローンの保証業務などで提携関係にある銀行や信用金庫、信用組合は全国に82もある。
   このうち、りそな銀行埼玉りそな銀行岩手銀行武蔵野銀行福島銀行などが、提携しているローン商品の販売を停止したほか、すべてと言っていいほどの提携金融機関が取り扱いは中止していないものの、販売を自粛している。銀行のウインドウなどに貼ってあったポスターや、据え置きのパンフレット、チラシは撤去され、インターネットのホームページの商品案内から削除した銀行もある。

焦げ付きのリスクなしで新規顧客の掘り起しが可能

   実は、アイフルの悪質な取り立てについては、提携金融機関にも顧客からのクレームが寄せられていた。
アイフルに借り入れがあった、ある顧客の場合はこんなケースだった。アイフルの借り入れ分が焦げ付き、執拗な取り立てにあって金融機関に泣きついた。金融機関がアイフルに対してクレームをつけても、「何かの間違い。顧客を脅すようなことはない」との一点張りだった。結局、その顧客のアイフル分の借り入れを銀行が肩代わりした。金融機関にとっても、要らぬ悪評がたって看板に傷をつけてもマイナスだから事態を覆い隠したわけだ。
   では肩代わりしてまで、なぜ金融機関は提携関係を解消しようとしないのか――。それは、このローン商品が売れ筋だからである。金融機関はいま、無担保・無保証の小口ビジネスローン、あるいは住宅ローンやマイカーローンなどの個人ローンを販売の中心に据えている。企業向け融資の伸び悩みもあって、こうしたローン商品に傾注しているのだ。
   提携のローン商品は金融機関にとって、焦げ付きのリスクなしで新規顧客の掘り起しが可能になる。つまり、いざというときの回収業務はアイフルがやってくれる。アイフル側の旨みは、金融機関の看板で優良な顧客の獲得ができ、保証料収入も入る点にある。

多少危ない客となれば、この提携ローンを売り込む

   例えば、ローン商品の適用金利・年15%程度のうち、約半分がアイフルの取り分、つまり保証料が占めている。利用者が返済に滞るようになると、まず銀行から催促がいくが、返済できなくなると、アイフルから催促がいくようになり、やがて回収に出向くことになる。
   金融機関が安心して貸せる顧客には、もちろん金融機関の自前のローン商品をセールスする。返済余力の乏しい、多少危ない顧客となれば、この提携ローンを売り込むことになる。こうしたローン商品のマーケットは競争が激しくなっており、提携する地域金融機関にとって、いまや収益拡大のためには欠かせない商品になっている。
   金融機関も売れ筋商品をみすみす手放すはずはない。提携関係の解消まで事態が進まないのは、今回のアイフル処分の成り行きをみて、ほとぼりが冷めるのを待ってといったところなのだろう。