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「アドセンス狩り」
正当性はあるのか

   グーグルは、クリック数が異常に増えたアドセンス広告を、いきなり削除する。不正な行為をした、とみなしているからだ。アドセンス広告を運営する側には大ショックで、これをグーグルの「アドセンス狩り」と呼ぶ。本人は「無実」で、他人が意図的にクリックした場合でもこの「狩」からは逃れられない。

「グーグル」「ビジネスニュース」というキーワードで検索すると、Google Newsの広告が現れる
「グーグル」「ビジネスニュース」というキーワードで検索すると、Google Newsの広告が現れる

   グーグルの広告表示は、検索結果の表示サイトに貼り付けるアドワーズと呼ばれるものと、ユーザーのホームページ(HP)上に掲載するアドセンスがある。アドセンスは、ユーザーのHPに適した広告ジャンルを、グーグルが契約している広告クライアントの中から選択し表示。HPを訪れた閲覧者が広告をクリックした回数に応じ、広告料がHP運営者に支払われる仕組みだ。同社の収益の約40%はこのアドセンスだ。ただ、HP運営者の登録料は無料としている。

無効なクリックかどうかはグーグルが判断する

   グーグルは、不正があったと判断したHP運営者のアドセンスを、いきなり削除している。弁明の機会は与えない。ユーザーがある日HPを開くと、いきなりアドセンスが削除されている事に気付くのだ。これが「アドセンス狩り」だ。
   ある男性のアドセンスが消えた。「アカウントの非承認」を通知するメールがくる。

『無効なクリックを発生させる行為は、いかなる理由であっても絶対に認められません。無効なクリックには、サイト運営者自身によるクリック、ロボット や自動クリックツールの使用によるクリック、その他ソフトウェアを使用したクリックなどが含まれますがこの限りではありません』

   そう書かれてあった。「この限りでない」という但し書きが付いているため、「無効なクリック」かどうかはグーグルが判断する、ということだ。
   この男性は「不正なことをした覚えは一度も無い」という。クリックが異常に多かった日もあったが、自分でやったのものではないという。つまり「他人が悪意か、いたずらでクリックを繰り返した、としか考えられない」と訴える。
   複数の異なる端末からアクセスした場合、不正を見つけるのはさらに難しくなる。別の「アドセンス狩り」をされた人も、不正をしたことがなく、「不正かどうかグーグルは判断できないはず」とグーグルの姿勢に疑問を投げかける。JINBN編集部は、この件についてグーグル日本法人に取材を申し込んだが、回答は得られなかった。

インターネット広告のクリックのうち、20~35%は不正?

   クリック数で広告収入額が変わってくるため、HP運営者が広告収入を増やすために、自分で何度もクリックする “詐欺”が問題になっている。米国では、05年2月に広告出稿側からの集団代表訴訟が始まった。「不正クリックで必要以上に広告費を支払うのは不当だ」というもので、贈答品販売会社と私立探偵会社が原告代表となり、アーカンソー州の裁判所に提訴した。被告側には同社のほか、ヤフーライコスなどが名を連ねている。06年3月、グーグルは9,000万ドルで和解案を提示。その中には「不正疑惑クリックがいつ発生したかに関係なく、すべての広告主の返金請求に応えたい」と記されている。
   インターネット広告のクリックのうち、20~35%がクリック詐欺と言われている。しかし、不正クリックを判断する明確な基準も、監視を行う何らかの第三者機関も存在しないのが現状だ。グーグルは和解に動いたが、第三者機関を作るのに消極的だという。同社の持つノウハウが、競合他社に漏れるのを嫌っているからだ。グーグルに対し同じ訴訟が今後、何度起きても不思議ではない。
   アドセンス型の広告でも不正を確認するのはほとんど無理だとすると、同社のビジネスモデルに危機が訪れている、ともいえそうだ。