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反核運動かたる スパムメール横行

   出会い系や医薬品関係のスパム(迷惑)メールは珍しくないが、最近では反核運動をかたるといった「平和活動系」のメールが横行している。最悪の場合は、あなたのメールが世界中から拒絶されてしまうことになりかねないのだ。

「イランは現代の広島と長崎です」「イランの戦争を防止できるのは我々です」

   2006年5月23日ごろから、こんなタイトルのメールが届くようになった。

サインすると危ない

スパムメールの文面に記載されている謎のウェブサイト。作ったのは何者だ
スパムメールの文面に記載されている謎のウェブサイト。作ったのは何者だ

   内容はというと、

「今日、日本は平和と調和の中で生きています。世界の政治に我々の声を伝えることにより、過去のひどい事件を繰り返さないよう防ぐのは、我々のいまの権利と義務です」

   という文面で始まり、反核運動への賛同を求める内容だ。メールはHTML形式で配信されており、メールの最後には「全世界の請願書の全文はこちらで読めます。あなたのサインもお残しください」と、別サイトに移動するように促される。
   促されるがままに、サイトに移動してみた。そうすると、意味不明のウィンドウが何度も立ち上がり、しまいにはブラウザがフリーズしてしまった。だが、それに懲りず、パソコンの設定を変えて、もう一度アクセスしてみた。
   そうすると、ブッシュ大統領を始めとする各国首脳への嘆願書が英文で掲載されており、賛同者の中には、秋葉忠利・広島市長の名前もある。だが、その他にはこれといった内容はなく、自分の連絡先を記入する欄が設けられているだけだ。サイトを設置したのが何者なのかも分からない。
   スパムメール排除サービスを行っているハートコンピュータが提供しているスパム対策日記「ハートの拒絶日記」は、このサイトについて警告している。

「メールアドレスを入れると、今度はあなたのメールアドレスをFrom に使って同じメールが世界中に大量に送られてしまいますので送らないように注意してください。 一旦そのspamが出てしまうとそのアドレスはspammerとして処理されあなたのメールが世界中から拒絶されてしまう可能性があります。 Reply-To: もあなたのアドレスになるので大量の抗議メールとエラーメールが届くはずです」

   とある。つまり、嘆願書に署名しようとして自分の名前を入力すると、自分の名前でスパムメールが発信されてしまう、ということだ。

発信元は個人情報などを盗み取ろうとするサイト

   さらに、スパム送信元のブラックリストデータベースを作ろうという 「RBL.JPプロジェクト」が運営する「フィッシング詐欺サイト情報」によると、このサイトにアクセスすると、ウイルスをダウンロードさせられるという。JINビジネスニュース記者のブラウザがフリーズしたのは、どうやらこれが原因のようだ。
   この謎のウェブサイト、内容を調べてみると、別のウェブサイトの内容を丸々コピーしたものだということがわかった。しかも、このドメインの登録情報を調べてみると、5月18日に登録されたばかりだ。どうやら、個人情報などを盗み取ろうとするサイトのようだ。
   ブロガーからは

「こういう、人の善意につけこんだ悪質サイトは、とても許せません。マジメに活動している人々への冒涜的行為とも言えましょう」
「あ~いやだ、いやだ、スパムで自分達の主張の押し売りかよ。こんなの逆効果じゃん」

   と、非難の声が相次いでいる。いったい、このサイト、だれがどのような目的で作ったのだろうか。スパムの踏み台にされるとあっては、簡単にメールを送信する訳にもいかない。謎は、深まるばかりだ。
   このケース以外にも、06年5月下旬までに、国内では防衛庁日経新聞社などを送信元に偽装して送信されるウイルスメールの被害が相次いでいる。

   手口は悪質・巧妙化している。