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フリーターから正社員? 人材会社の新たなビジネス

    フリーターを再教育し、企業に正社員として就職させる人材サービス会社が増えている。ある人材会社ではこの1年間だけで300人のフリーターを正社員にした。景気が回復し企業が正社員を増やしていることもそうだが、人材会社が利益を上げるための新たなビジネスモデルにもなっているようだ。


フリーターの雇用問題は解決できるのか

    これまでは"フリーターは悪"のような風潮があった。フリーター経験が職歴とはみなされずに、仕事が長続きしないとか、トラブルを起こしやすいなど生理的に敬遠する企業が多かった。

1年間で300人を企業に送り出す

    人材サービスのジェイックは、2006年6月からフリーターや第2新卒の就職支援「JAIC営業カレッジ」を始めた。もともと同社は社員研修事業や、即戦力となる人材紹介の会社だった。フリーターに目を付けた理由を同社では、

「団塊の世代の退職後、それに代わる企業の働き手はフリーター世代と考えた」

    という。28歳までのフリーターを研修させ、企業との集団面接を実施したところ、これまでに約300人の就職が決定した。実に受講生の80%が正社員としての就職に成功している。研修期間は2週間で無料。研修後、1日で15~20社と面接できるシステムになっている。

正社員になりたいんだ!

    実は同社、当初はフリーターを企業に紹介する事業を計画していた。ところが、

「紹介では応募がなかった。フリーターには"正社員になりたいんだ!"という強い希望があった」 そこで正社員になるためのカレッジにしたところ応募が殺到したというのだ。

    人材派遣最大手のパソナも、フリーターを企業に就職させる『仕事大学校』を05年11月に開設した。2ヶ月間の基礎研修と1年間の派遣実務研修でビジネススキルを身に付けさせる。研修後は同社グループの人材斡旋会社などを通じて正社員の道が開ける。現在53人の研修生がいて、最高齢は32歳だ。

「フリーターという"肩書き"から正社員になるには高い壁がある。有能な方でも壁は同じなんです。そんな方々の夢の実現をサポートするのが目的です」

    と同社広報企画部では話す。

    フリーターとひとことで言っても、複数の職業を経験し実績やキャリアで正社員を上回る人もいれば、大学卒業後に海外で生活したり、夢を追いかけて特殊技能を身につけたりなど様々だ。総務省の統計によれば、15歳から34歳までのフリーター(非正規雇用者)は05年には201万人。04年に比べると13万人減った。フリーターも正社員を目指す人が多くなり、今年6月に就職した23歳の男性元フリーターから、

「早くフリーターを卒業したかった。フリーターだと周りから変な目で見られるし、収入が安定しなくて不安だった」

    という話が聞けた。フリーターも"現実"に気が付いている。

    こうしたフリーターの正社員志向と、人材サービス企業の変化について、JINビジネスニュースでは社団法人日本人材派遣協会に取材したところ、

「現在もフリーターを正社員にする企業は少ない。面接でも"えっ?君、フリーターなの"となれば、キャリアはお構いなしに切られる場合が多いんです」

    と話した。

薄利多売な人材派遣業より、高利益な人材斡旋

    それだけフリーターのイメージが悪いわけだ。一方で、企業は景気が良くなり、人材を集めなければならない。さらに、団塊の世代が定年を迎える2007年問題が迫っている。

「少子高齢化で、人材派遣会社などは派遣する人材の確保に心配が出た。それ以上に、競合会社が増えるなか、派遣という薄利多売な事業よりも、正社員を斡旋するほうが高い利益が得られることに目をつけたのだと思います」

    つまり、自社で従業員を雇用し、派遣費用の中から健康保険や、管理費など経費を負担しなければならない人材派遣業に比べ、見つけた人材を直接他社に渡す斡旋業のほうが儲かる。例えば一般的に、年収500万円の正社員を斡旋した場合、30%の150万円が利益になる業界なのだという。

    そしてこうした動きはフリーターにも、企業にとってもメリットは大きいという。

「企業がフリーターを嫌うのは"安心感"が得られないから。しかし、優秀なフリーターは多いんです。人材会社がフリーターに"お墨付き"を与えることで、企業はある程度納得して採用できることになるのです」