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松下電器 リストラから 成長路線へ転換

   リストラを柱に、業績が「V字型」回復した松下電器産業が路線転換を図る。薄型テレビ、カーエレクトロニクスなど主力4事業を中心に成長路線を追求しようというのだ。

   松下電器の大坪文雄社長が、2006年6月末の社長就任後初の記者会見を先週開き、「成長路線への転換が私の使命。コスト競争力を強化して売上高の増加を目指す」との方針を表明した。前任の中村邦夫社長時代に大きな成果を挙げたリストラ策を踏まえてのもので、主力事業を中心に攻めに転じる。

 

目標達成に向けた最大の課題が海外事業

松下電器は、薄型テレビなどに注力する
松下電器は、薄型テレビなどに注力する

   大坪社長は、成長路線を追求するための重点分野として、(1)薄型テレビ、(2)カーエレクトロニクス、(3)ホーム・家電事業、(4)半導体――の4事業を挙げた。その上で、薄型テレビは年間売上高で1兆円(05年度実績6,000億円)、カーエレクトロニクス1兆円(同6,900億円)、ホーム・家電事業3兆円(同2兆5,000億円)、半導体6,500億円(同4,600億円)と、それぞれ目標額を明らかにした。
   達成時期は明確にしなかったが、これらの目標数字は07年1月に発表する予定の3カ年の新中期計画に盛り込み、達成の目標時期も明示する見通し。
   大坪社長は売上高と並んで、中村前社長(現会長)と同様に収益力の強化も引き続き重視する考えを表明した。指標になるのは本業の収益力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)で、前社長時代に打ち出した「2010年度に営業利益率10%達成」の目標を堅持する。
   ただ今年度の同利益率は5%程度の見通しで、目標達成のハードルは高い。大坪社長自身、「並み大抵の努力では達成できない」と認めている。目標達成に向けた最大の課題が海外事業だ。05年度は国内事業の同利益率は5.4%だったのに対し、米国は1.2%、欧州は0.4%などと苦戦を強いられた。

大規模なM&Aには慎重

   しかし、目標達成を確実にするため大規模なM&A(企業の合併・買収)を行うことについては慎重で、「海外での販売増とコストカットの強化で、売上げ増と利益率の向上を両立させる」との考えを強調するにとどまった。
   05年度に306億円の最終赤字を計上し、経営不振が続いている子会社の日本ビクターの再建問題も避けて通れないが、「大株主として自助努力を見守るスタンスに変わりはなく、相談があれば商品展開のノウハウ提供も考える」と、従来方針を繰り返した。このほか、携帯電話端末事業の立て直しについては、NECとの提携効果で競争力を高めていく考えを示した。
   ただ、「勝ち組」を代表する薄型テレビでも競争が一段と激しさを増していくとみられ、こうした課題への対応策をどう具体化していくかが問われている。