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トヨタ、リコール放置 情報開示のずさん

   トヨタ自動車がRV(レジャー用多目的車)「ハイラックスサーフワゴン」の欠陥を1996年に認識しながら、リコール(回収・無償修理)を8年間怠っていたとされる問題で、トヨタ社内の情報管理体制に問題があったとして、国土交通省が業務改善指示を出す事態に発展した。

トヨタの「ハイラックスサーフ」。情報開示は進むのか
トヨタの「ハイラックスサーフ」。情報開示は進むのか

   この問題は7月11日、熊本県警がトヨタの対応の遅れで04年、5人負傷の事故が起きたとして、歴代の品質保証部長3人を業務上過失傷害の疑いで書類送検。これを受けてトヨタが20日、国土交通省に事件の経緯に関する報告書を提出していた。

   同県警の調べでは、トヨタは社内の調査で96年、ハンドルの動きを前輪に伝える部品が強度不足で折損する欠陥を認識しながら、対策を取らなかったため、04年8月に熊本県菊池市で5人が負傷する事故が起きたという。トヨタはこの事件の後の同年10月、リコールを届け出ていた。

不具合件数で熊本県警と食い違い

   96年時点で不具合情報は5件寄せられていたが、トヨタは「運転方法に問題があるなどの事情で、リコールが必要との判断には至らなかった」といい、「送検された3人に落ち度はなかった」と同県警の容疑事実の認定には異議を唱えている。
    今回の摘発は、クルマの安全に直結する不具合情報に関して、トヨタの情報管理・活用の不十分さ、事件が明るみにでた後の情報開示のずさんさも、併せて浮き彫りにした。
    国土交通省が問題視したのは、このリコールの届け出の際にトヨタが報告した不具合件数が11件で、熊本県警が「トヨタがつかんでいた不具合件数」として公表した80件と、大きな開きがあったこと。トヨタは「リコールは、販売店経由で来る『市場技術情報』に基づいて行った。その件数が11件だった」と釈明しているが、実際には保証修理に関する情報や、ユーザーから直接寄せられる情報など、原因が特定できない情報も多数寄せられていて、それらを合計すると、トヨタが把握していた情報の総数が82件だったという。

「記者会見を開くのが遅かった」と謝罪

   一方で、事件が発覚した11日に記者会見を行わず、プレスリリース1枚出しただけだったトヨタの対応も批判を集めた。渡辺捷昭社長は、事件発覚から9日経った20日になってようやく会見を開き、「心配をおかけし、深くお詫び申し上げる」と謝罪。「情報の精査に時間がかかったが、(会見を開くのが)遅かったと反省している」と対応のまずさを認めた。同社が対応に手間取る間、トヨタ車のユーザーには不安が拡大し、「自分の車はリコール対象ではないのか」との問い合わせが多数、同社や販売店に寄せられていたという。
    今回のリコール放置事件で直接問われるのは、96年時点での判断の是非。ただトヨタのリコール発生件数はここ3~4年、車の高機能化や部品共通化を背景に急増しており、品質問題は経営の根幹をも揺さぶりかねない重要課題になっている。
    トヨタは昨年4月に生産、開発などの担当者を集めた品質向上の専門組織を社内で発足させ、改善点の洗い出しを進めている。また不具合情報の保存期間を5年から10年に延ばしたり、不具合車両の現物確認の体制を改めるなどの取り組みを通じ、信頼回復に全力を尽くす方針だが、今回の事件発覚とその後の対応の不手際は、世界一を目指すトヨタにさえ大きな死角があることを示した。