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「枕投げ」「じゃんけん」 ウィキペディアはマニアックがおもしろい

   ネット上の百科事典、ウィキペディア(Wikipedia)の注目度が急速に高まっている。「だれでも書きこめる」のが受けて、日本語版でも、現在25万を超える検索項目を持っている。しかも、百科事典より情報が早く、学者の編纂では決して生まれない"マニアック"な情報も詳しく載っている。

   2001年1月に英語版で誕生したウィキペディアは、01年5月20日に日本語版がスタートした。執筆は誰でもでき、その都度更新されていく。「だれでも書ける百科事典」だからこそ、最新の情報にすぐアクセスできる。

「枕投げ」の「終了条件」を知ってる?

普通の百科事典には「枕投げ」のやり方は書いていない
普通の百科事典には「枕投げ」のやり方は書いていない

   例えば、06年夏の高校野球で一際話題になっている「ハンカチ王子」で検索してみると、その量に驚く。「斎藤佑樹(さいとう ゆうき、1988年6月6日)早稲田実業学校に所属する野球選手。ポジションは投手。群馬県太田市出身」という基本情報のほか、「『クールな剛腕』とも呼ばれる。また、試合中にハンドタオルで汗を拭く姿は、女性ファンの心をつかんでいる。フジテレビでは『ハンカチ王子』と呼んでいる」など、タイムリーな情報をいち早く入手できる。ここまで最前線の事象を捉えた辞典はほかにはない。

   学者の編纂では決して生まれないような"マニアック"な情報も詳しく載っている。

   「枕投げ」で検索すると基本構造、ルール、可能条件、枕投げによる影響などを見つけることができる。なかには「枕投げ」の「終了条件」というものがある。それには、

「枕投げが終了する条件はいくつかあり、競技者が飽きることで起こる自然脱落、外部からの競技の停止命令、遊びの逸脱による怪我や器物を破壊などの条件で枕投げが終了することが多い」

とある。

「くだらない」と思いがちな情報のおもしろさ

   「くだらない」と思いがちな情報が、辞典調に、そして時には辞典では考えられないような多くの分量で示されると、読者のほうもついつい頷いてしまう。ちなみに『広辞苑5版』(岩波書店)には、「枕投げ」はない。

   「じゃんけん」では、由来のほかに、手を出し合うときの「じゃんけん」の掛け声の地域別のバリエーションや、ローカルルール(その地方特有の「じゃんけん」のルール)などが記載されている。さらには、「心理戦」という項目もあって、

「例えば、2人での勝負において、2回連続で互いにグーであいこになったとする。この時、相手は何を出すかを考えると、一番単純なのは相手がまたグーを出すことだから、それに勝つパーを出す作戦が考えられるが、相手も同じ考えをして来るならばパーに勝つチョキを出すべきである」(心理戦の"ごく一部"から)

ともある。

記載されている情報の「信憑性」が一番の問題

   「だれでも書ける」にも問題はある。それは、記載されている情報の”信憑性”である。実際、ウィキペディアには「情報の信憑性は一切保証されていない」という但し書きがある。しかし、『週刊東洋経済(2006年8月26日号)』(東洋経済新報社)のなかで、ウィキペディア日本語版管理者の吉沢英明さんは

「編集者・閲覧者全員が監視者で、利用者が増えれば増えるほど、誤りが書き換えられる機会が増え、誤りはだんだん深刻ではなくなっていくのです」

と述べている。実際に、ウィキペディアでは不正な記述や「荒し」行為をした人には、新しい記述ができないようにブロックしたりして、一定の「正確性」を確保しようと努めている。

   都内の会社員Aさんは、「自分しか知らないことを記述できる優越感がある。かつ、自分の知識をみんなのために役立てることができる」という動機から度々ウィキペディアに書き込む。

「(ウィキペディアは)善意に支えられて存続しているけど、それがなければ崩れる可能性もある」