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株の誤発注 取り消しルール導入

   一度、成立した株取引を取り消すことが可能か否か――。2005年12月に起きたみずほ証券の誤発注トラブルから間もなく1年。日本証券業協会(日証協)がトラブルの再発防止に向け、重い腰を上げた。日証協はこのほど、誤発注で成立した株取引に限り、東証はじめ全国の証券取引所が約定を取り消すことができる制度を定めるよう要請した。日証協が取引所の決済に申し入れを行うのは異例だ。みずほ証券のジェイコム株の誤発注で、約415億円の損害賠償金を支払うよう提訴された東証としても、証券業界に押される形で約定取り消しのルールを定めるのは「渡りに船」で、新たな制度が年度内にも実現する見通しとなった。

海外では誤発注約定取り消しルール存在

誤発注の取り消しルール導入へ
誤発注の取り消しルール導入へ

   東証は金融庁などと近く制度改正に向けた協議に入る。民法では誤発注といえども、形式的には正規の手続きに基づいて成立した商取引を取り消すことはできないことになっている。このため日証協は半年にわたって法律家を交えた研究会を開き、誤発注の場合の約定について、取り消しの正当性を議論してきた。その結果、「(誤発注などで)市場の公正性、適正な価格維持に重大な影響を及ぼす場合に限り、約定の取り消しができる権限を取引所が持つべきだ」との結論を得た。
   金融庁が「(全国の証券取引所で)05年に総計1万4,318件の誤発注が発生し、このうち667件は売買代金が1億円を超える」(金融庁)との点検結果をまとめたことも、日証協の背中を押した。海外の取引所には、誤発注の約定を取り消すルールが存在することも、日証協と東証に追い風となった。

みずほ証券のような誤発注は、想定外

   証券取引所と証券会社が結んでいる現行の契約は、誤発注であっても一度成立した株取引の約定は取り消せないことになっている。「現実に、みずほ証券のような誤発注が起きるとは、誰も想定すらしていなかった」(東証幹部)というのが本音だ。
   このため、みずほ証券の場合、東証は天災などの緊急時に適用する規定を初めて適用。売った側と買った側が1株当たりの価格を決め、その差額を強制的に精算する「強制現金決済」を行った。

   問題となった誤発注は05年12月8日に発生。この日、東証マザーズに新規上場した総合人材サービス業、ジェイコムの株式について、みずほ証券の社員が「61万円で1株」の売り注文を出そうとして、「1円で61万株」とコンピューターに入力ミスした。
   誤りに気付いたみずほ証券は注文取り消しを行なったが、「東証のシステムが不備だったため、受け付けられず、数億円で済んだはずの損失額が約407億円に膨らんだ」という。みずほ証券は諸費用を含め約415億円の損害賠償金の支払いを求めて東京地裁に提訴し、現在、係争中だ。