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エルピーダメモリ 合弁で「生産世界一」奪取計画

   パソコン(PC)や携帯電話などに使う半導体「DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)」の国内唯一の専業メーカー、エルピーダメモリが、台湾の半導体メーカー「力晶半導体」と折半出資の合弁会社を設立し、台湾中部の台中市に新工場を建設する。2006年12月7日発表した。

   生産能力は2011年に300インチウエハーで月産24万枚という計画で、エルピーダ・力晶2社連合は合計シェアで現在の韓国サムスン電子を抜くことになり、DRAM売り上げ世界一を目指す。最終的な投資額は1兆6,000億円にのぼる予定で、両社が折半で負担する。

新工場は、PC向けDRAMの専用にする予定

「ウィンドウズビスタ」の登場でメモリーの需要も増えそうだ
「ウィンドウズビスタ」の登場でメモリーの需要も増えそうだ

   新工場は、PC向けDRAMの専用工場にする予定。両社折半でまず1600億円を投じ、07年7~9月期に月産3万枚規模で量産を開始する。投資資金は手持ち現金と借り入れで当面賄う考えという。エルピーダの製造拠点としては現在、子会社の「広島エルピーダメモリ」(広島県東広島市)があるが、汎用性の高いPC向けのDRAMは価格競争力がカギになるため、生産コストが安い台湾に工場を建設することにした。

   エルピーダの直近の世界シェアは10.2%で世界5位。力晶は4.8%で7位(ともに米アイサプライ社調べ)。エルピーダは力晶に対しこれまでも製造技術を供与し、生産も一部委託する協力関係にあった。合弁会社の経営陣はエルピーダ、力晶で半分ずつ派遣するが、社長と会長は力晶が出す。2社が連合を組むことで、世界シェア27.8%のサムスン電子の追い落としを図る。

“量より質”戦略からの一大方針転換

   エルピーダが大型の新工場建設を決めたのは、DRAM市場は世界全体で3兆円規模と堅調に推移し、07年からはさらに、大容量のDRAMを必要とする米マイクロソフトのOS(基本ソフト)「ウィンドウズビスタ」に対応するPCが、世界規模で本格的に出回るなど、今後も市場の大幅な拡大が見込めるためだ。

   PC向けDRAMは汎用性が高い分、差別化が難しく、需要次第で価格が急落するリスクが大きい。この特性を踏まえ、エルピーダはこれまでPC向けDRAMは生産せず、携帯電話やデジタル家電向けの高級品に特化する”量より質”の戦略を取ってきた。このため今回の投資は、同社として「生産規模世界一」の座の奪取に向けて舵を切る一大方針転換。会見した大塚周一最高執行責任者(COO)は「DRAMは量を持たないと市場競争力を保てない。量を確保するにはパソコン向けを手がけることが不可欠だ」と説明した。

   日本の電機各社は80年代後半にDRAMで世界の半導体市場を席巻。最盛期には半導体売上高の世界トップ10のうち6社を日本企業が占めた。ただ、90年代に価格競争力で韓国や台湾メーカーに敗れ相次いで撤退。NECと日立製作所の部門統合で99年に発足したエルピーダが残るのみだ。