J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

豆ダイエットで25キロやせ!? 健康雑誌の驚くべき実態

   「健康雑誌」として多くの雑誌が書店で販売されているが、なかには科学的に考えれば首を捻りたくなる情報が満載というのが実情だ。「豆ダイエット」、「たまねぎダイエット」、「アワビ粉末で緑内障改善」「ゴマで股関節痛解消」などなど、どこかのテレビ番組であったような、なかったような情報で満載のこれらの「健康雑誌」。ほんとに大丈夫なんだろうか?

タレントが豆を食べると「痩せた」とする体験談

科学的じゃなくてもいい?「健康雑誌」で紹介される驚きの体験談
科学的じゃなくてもいい?「健康雑誌」で紹介される驚きの体験談

   1号あたりの発行部数15万9,000以上(03~04年の平均)を誇る健康雑誌『壮快』(マイヘルス社・マキノ出版)。例えば、同誌07年3月号の場合、「豆ダイエット」の特集がある。それには、有名タレントが豆を食べることで「痩せた」とする体験談が紹介されている。
   まずは料理研究家・タレントの園山真希絵さん。「豆ダイエットで25キロやせLLサイズからモデル体型に変身しアトピーも完治」と題し、一日9,000キロカロリーも摂取しながら、身長160センチ・体重40キロの体型を維持しているといい、それは豆を食べるようになってからだという。
   タレント・ナレーターの魚住りえさんの場合、納豆、豆腐、おからなどの豆製品を食べるようになってから「いつの間にか」4キロ痩せた、などなど、いくつもの「豆ダイエット」の「奇跡体験」が綴られている。

   「健康扱うテレビ番組 すべて疑惑あり」で報じたとおり、研究者からは、「食事で長期的にダイエット効果があるなんてことはありえないです」(共立女子大学・井上修二教授)「食べ物で痩せるというのは、むしろ毒があると思った方がいいです」(群馬大学・高橋久仁子教授)との指摘がされていたが、「豆ダイエット」の場合はどうなのか。

   J-CASTニュースが、『壮快』編集部に問い合わせたところ、室橋一彦編集長の署名で次のような回答が書面で寄せられた。

「この特集のねらいは『豆を食べるだけでやせる』ということではございません。『体にいい豆類を日常の食生活に上手に利用してダイエットに役立てよう』というのが主旨の特集でございます。実際、記事の中では、豆類以外の食生活について触れておりますし、運動についても紹介しております。栄養学者の解説も紹介しております」

   ちなみに、特集記事のタイトルを挙げると「豆ダイエットでスーッと4キロやせお尻や太ももが細くなりジーンズがブカブカ」「冷凍枝豆を食前に食べたら10キロ近くやせブヨブヨお腹が引き締まり腹筋が出現」「酢ピーナッツとゆでアズキで16キロやせ~」「黒豆ご飯で知らぬ間に9キロやせ~」という具合だが、驚いたことに、どうやら「豆だけでやせる」特集ではないらしい。

「科学的な証拠があるのかいうと難しいところがある」

   『壮快』07年3月号はほかに、「〈タマネギ〉で白内障 糖尿病が大改善!ひざ痛耳鳴りも消えたと超人気」「〈アワビの粉末〉で緑内障 白内障、飛蚊症 網膜症が大改善 視力も視界も視野も大復活」など様々な特集が掲載されている。株も売上も「吉方位」に置いたら急上昇するとかいう「財運ボックス」の特集はまあ別としても、そもそも医療的立場や科学的見地にもとづいた「健康雑誌」なのだろうか。室橋一彦編集長は、

「弊誌『壮快』に掲載している多くの記事は、医療の専門家、研究者、著名人、読者等の署名記事でございます。医療的見地・科学的見地を基本としておりますが、専門情報等を日常生活に役立てるかけはしとして、読者ら一般生活人の体験記も掲載しております。その場合も体験記に対する専門家のコメントを掲載しております」

   としている。

   一方、『はつらつ元気』(芸文社)07年3月号では、「ゲルマニウム温浴で肌ツルツル」「『ゴマのツボ貼り』療法」などが特集されている。ちなみに、ゲルマニウムは大阪大学の菊池誠教授に「健康にいいという科学的な根拠は無い」とされていたものだ。では、同誌では科学的な見地から編集されているのか。『はつらつ元気』の鈴木秀雄編集長からは意外な答えが返ってきた。

「載っている記事がすべて科学的なエビデンス(証拠)があるのかどうか、というと難しいところがありますよね。うちの場合、体験談にもとづいてそれを拾い上げて、実践術を紹介するというかたちになっています。健康や生命の営みを科学ですべて実証できるのかと言うと難しいですよね。例えば『気』とか。科学的にどうかというのは、あまりに『西洋医学的』な考え方で、(『はつらつ元気』では)民間療法とか体験データを統合して紹介しています」

   つまり、「健康」には科学だけでは解き明かせない「深~い」領域があり、ほかの人の体験を信じてみよう――こういうことのようだ。